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サッカー フットサル コラム 2022年2月1日

根拠のない楽観が生んだ数百億円レベルのツケ。財政危機のバルセロナを悩ますデンベレの処遇

木村浩嗣コラム by 木村浩嗣
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ウスマン・デンベレ

ウスマン・デンベレ

ウスマン・デンベレ(24歳)の運命が今日(1月31日)に決まる。移籍するか、それとも残留するか。残留した場合は、プレーさせないことをクラブが公言している。プレーしないままカタールW杯を迎えるわけで、代表招集されない可能性も出てきて、スポーツキャリアに大きなダメージになりかねないが、本人に動じる様子はない。

1カ月前までの選択肢は、契約更改かプレーさせないかだったが、デンベレの態度は変わらなかった。プレーさせないというのがただの脅しだと高をくくっているのか、試合に出なくてもデシャン監督に招集されると信じているのか、プレーしないで数億円が懐に入るならこんな楽なことはない、と思っているのか。なので、今回も待ちの姿勢で、年俸を下げてまで移籍や契約更改に応じるつもりはないだろう。

移籍金は2000万ユーロだと言われている。2017年8月にバルセロナがドルトムントに払ったのは1億4000万ユーロだったから4年半で市場価値が7分の1になった計算で、売れば大損なのだが、半年後に自由契約つまり移籍金ゼロになってしまうので、叩き売りするしかない。

それに、手取り年俸900万ユーロの半年分450万ユーロ(約6億円!)をプレー時間ゼロの選手に払うよりも、放出して浮いた年俸分を新獲得選手に回す方が有益なのは、言うまでもない。財政危機のバルセロナは、年俸枠を空けないと新たな選手登録ができない状況にある。

デンベレの姿勢に一貫しているのは、バルセロナでプレーすることへのこだわりの無さである。

「エムバペよりもデンベレが上」(ラポルタ会長)。契約更改に応じてもらえると踏んでいた会長やシャビ新監督は盛んに持ち上げた。だが、その間に本人がしていたのは、練習に遅刻して新監督が課したばかりの規律に2度違反(理由は寝坊と、時間の勘違いだった)し、クリスマス休みにノーマスク結婚式を挙行しコロナに感染して帰って来ることだった。

確かに素晴らしいタレントで、特に両足が使えて右に出るか左に出るかわからない高速ドリブルは、優秀なDFが2人がかりでも止められないレベルだ。しかし、プロ意識はゼロでクラブ愛もゼロ。だから今、バルセロナはどっちに転んでも大損、という状況に陥っている。タレントの持ち腐れで本当に大損するのは本人なのだが、そんな自覚は期待できない。

証言によると、デンベレのプロ意識の欠如はドルトムント時代にわかっていたことだという。それを承知で獲った。若気の至りで、成熟すれば変わるだろう、という根拠のない楽観が数百億円レベルのツケをクラブに回すことになった。

選手獲得のエキスパート、モンチ(セビージャ、スポーツディレクター)はクラブ、代理人、チームメイトにリサーチし、現地で練習や試合をチェックして徹底的な身辺調査を行う。クラブやチームに金銭だけでなく対外イメージなどで大きなダメージを与えかねないトラブルメイカーを排除するためだ。

今回のデンベレのケースから学ぶことは少なくない。世の中を舐めている若造を大金持ちにしてさらに舐めさせるという、今社会のあちこちで起きている問題とサッカー界も決して無縁ではないことも含めて。

文:木村浩嗣

木村浩嗣

編集者、コピーライターを経て94年からスペインへ。2006年に帰国し『footballista フットボリスタ』編集長に就任。08年からスペインに拠点を移し特派員兼編集長に。15年編集長を辞し指導を再開。スペインサッカーを追いつつセビージャ市王者となった少年チームを率いた。現在はグラナダ在住で映画評の執筆も。

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