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アーロン・ラムズデイル
かつてチェルシーやアーセナルで一世を風靡した名GKペトル・ツェフは、プレミアリーグ最多となる202試合のクリーンシートを記録している。息の長いポジションとはいえ、15シーズン近く第一線で活躍していたのだから、改めて高く評価し、敬意を表さなくてはならない。
現在、プレミアリーグを代表するGKといえば、リヴァプールのアリソンとマンチェスター・シティのエデルソンだ。今シーズンも最多クリーンシートをめぐってしのぎを削り、1月23日時点でエデルソンがトップの12回、アリソンは10回で第2位。デッドヒートを展開している。
ちなみに両名ともにブラジル代表。どちらかはベンチを温めざるをえないなんて、なんという強力だろうか!
しかし、今シーズンはアーセナルのアーロン・ラムズデイルが台頭してきた。クリーンシートは2位タイの10回。数多くのファインセーブと自信にみなぎるコーチングで、首脳陣とサポーターの信頼を勝ち取っている。
当然、イングランド代表を率いるガレス・サウスゲイト監督も興味津々だ。
安定感とキックの精度では現時点の第一GKであるジョーダン・ピックフォードを上まわり、所属するマンチェスター・ユナイテッドで出場機会を失ったディーン・ヘンダーソンは、イングランド代表への復帰が遠のいた。
DFラインとの連携を踏まえたうえで、サウスゲイト監督は国際舞台の経験値でまさるピックフォードを一番手に据えているようだ。しかし、彼は気が短く、セービングのフォームもなかなか奇妙だ。基本に忠実ではない。
また、素材としてはラムズデイルが上との指摘も少なくなく、ポール・マーソンやイアン・ライトといったアーセナルのOBだけではなく、リオ・ファーディナンド、ギャリー・ネヴィル、ジェイミー・レドナップなど、他クラブのレジェンドもアーセナルのGKを推しはじめた。サウスゲイト監督が、一番手に据えるタイミングを計っていたとしても不思議ではない。
さて、ラムズデイルはことし5月で24歳。前途洋々たる若者だ。先述したようにGKは息の長いポジションだけに、今後12~13年はトップレヴェルを維持できる。
もちろん、酒や女性にうつつを抜かしていると瞬く間に身を亡ぼすが、アーセナルのミケル・アルテタ監督は、「まじめで明るく、下部組織の選手の面倒もよくみている」と、ラムズデイルの性格を絶賛していた。道を踏み外す恐れはなさそうだ。
“伝説の名手” ゴードン・バンクスが礎を築き、レイ・クレメンスとピーター・シルトンが彩を添えた名GKの名残が消えて久しい。デイヴィッド・ジェームズやロバート・グリーン、ポール・ロビンソンはイングランド代表に選ばれたといっても、欠点だらけだった。
しかし、これといった短所が見当たらず、近代フットボールにも適応する足技を持つラムズデイルなら、バンクスの系譜を受け継ぐに違いない。イングランドに、期待のGKが現れた。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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