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ウェイン・ルーニー
ようやくひと息つけた。
7節のマンチェスター・ユナイテッド戦から2引き分けを挟む6連敗。グダグダだったエヴァートンが、15節のアーセナル戦で2-1の勝利を収めた。冨安健洋を“故意に踏みつけた”ベン・ゴッドフリーもなぜか退場にならず、ノリッジ戦(6節)以来、およそ二か月半ぶりの3ポイントを獲得している。
しかし、ラファエル・ベニテス監督の立場は依然として不安定だ。なにしろ、リヴァプールを率いていた当時にエヴァートンを「スモールクラブ」と揶揄したため、エヴァトニアンには支持されていない。
カルロ・アンチェロッティ前監督が突如としてレアル・マドリーに復帰。慌てた上層部が人選を急いだ結果の監督就任だ。大半のエヴァトニアンが、「ベニテス、出ていけ!」と考えている
公には「ベニテス完全サポート」を打ち出した上層部も、遅かれ早かれ新監督を招聘する公算が大きい。問題はフランク・ランパード、もしくはウェイン・ルーニーが、候補に挙がっていることだ。
ともにイングランド代表のレジェンドであり、ランパードはチェルシーで、ルーニーはマンチェスター・ユナイテッドで多くのタイトルを手にしてきた。知名度は申し分ない。
ただ、両者とも監督としての経験が不足している。チェルシーの監督を務めていたころ、ランパードは好き嫌いが過ぎるマネジメントで選手の離反を招き、およそ一年八か月でその座を追われた。ルーニーはダービーの監督に就任し、まだ一年も経っていない。
要するに、エヴァートンの窮状を救える器なのか、という大きな疑問符が付く。このクラブのアカデミーで育ったルーニーが監督に就任し、このクラブのカルトヒーローともいうべきダンカン・ファーガソンがコーチングスタッフに名を連ねれば、エヴァトニアンはウルッときてキュンとする。
しかし、明確な戦術プランを持ち、研究熱心なタイプに的を絞った方がいい。
エルネスト・バルベルデが最良の選択だ。
バルセロナを率いた約二年半、ハイプレスの導入によりスタッフとの対立が表面化。この戦術にリオネル・メッシを組み込み、バルサ伝統の4-3-3から4-2-2-2への変更を検討したが、スタッフの抵抗にあって計画は頓挫した。
ただ、バルベルデの理論は戦術家の間で高く評価されており、マンチェスター・シティでジョゼップ・グアルディオラ監督の副官を務めるファン・マヌエル・リージョも、「世界で最も優れた指導者のひとり」と語っていた。
エヴァートンの中盤は耐性の強いアブドゥライ・ドゥクレとアランを擁している。リシャーリソンとドミニク・カルバート=ルーインもプレッシング能力の高いFWだ。バルベルデが仕掛けるハイプレスに対応できるタイプを4人も有し、ルカ・ディニュは世界有数の左サイドバックである。
そう、タレントは揃っている。
彼らを生かすも殺すも監督しだいだ。ランパードやルーニーではなく、明確なプランを持つバルベルデの招聘こそが、名門復活の第一歩ではないだろうか。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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