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アーリング・ハーラン
消極的だったのか、それともプランどおりだったのか。今夏のマンチェスター・シティは謎めいていた。
100億ポンド(約150億円)もの巨額を投入し、アストン・ヴィラからジャック・グリーリッシュを獲得したものの、クリスチャーノ・ロナウドとの交渉ではカネを出し渋った。ハリー・ケインの獲得でも積極性を欠いていた。
ここでシティの戦力をチェックしてみよう。人材不足が懸念されているのは左サイドバック、アンカー、そしてゴールゲッターだ。
左サイドバックはジョアン・カンセロ、オレクサンドル・ジンチェンコ、ナタン・アケーのローテーションだ。アンカーはロドリが軸で、イルカイ・ギュンドアンとフェルナンジーニョで対応する。そして1トップの基本は、現時点でフェラン・トーレス。周囲との連携に優れており、ジョゼップ・グアルディオラ監督も「センスは申し分ない。あとは経験を積むことだ」と、手ごたえを感じ取っているようだ。
したがって36歳のC・ロナウド、28歳のケインに投資するなら、現有勢力にグリーリッシュを加えた陣容で挑む方が得策、との判断に至ったと推測できる。
しかし、今シーズンの強化が終わったわけではない。「シティは来年1月の移籍市場で必ず動く」との見方が大勢を占めつつある。リーズのカルヴィン・フィリップス、ウェストハムのデクラン・ライスといったイングランド代表の主戦アンカーに興味津々、との情報がすでに流れはじめている。
そして前線は、やはりアーリング・ハーランが第一候補だ。彼が所属するドルトムントは、契約解除金を7500万ユーロ(約97億5000万円)に定めた。莫大な金額ではあるが、21歳という年齢を踏まえると費用対効果は申し分ない。シティだけではなく、メガクラブなら支払える。
ただ、チェルシーは前線にロメル・ルカクという絶対的な存在がある。パリ・サンジェルマンは選手の年俸が450億円に達したため、補強よりも整理を優先しなくてはならない。
レアル・マドリーの第一候補はあくまでもキリアン・エムバペ(パリSG)であり、マンチェスター・ユナイテッドはハーランのエージェントを務めるミーノ・ライオラとの関係が芳しくない。
「われわれの経済力では不可能」
バイエルン・ミュンヘンからはカールハインツ・ルムメニゲ元会長のギブアップ宣言が聞こえてきた。
こうして、ハーラン獲得に関しはシティがアドバンテージを握りつつある。だからこそ今夏はケインを見送り、来年1月、もしくは夏の移籍市場でハーランに本腰を入れる、と推測するのは飛躍しすぎだろうか。
「メジャータイトルを勝ち取るレヴェルにあり、なおかつ多くのゴールを決められるクラブを彼は選ぶに違いない」
ライオラ(前出)も、移籍を前提として発言した。さぁ、ハーランの新天地はシティか、あるいは他のメガクラブか。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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