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サッカー フットサル コラム 2021年4月21日

根まわしが行き届かず、スーパーリーグ構想は瞬く間に頓挫

粕谷秀樹のOWN GOAL,FINE GOAL by 粕谷 秀樹
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スーパーリーグに反対するリヴァプールサポーター

スーパーリーグに反対するリヴァプールサポーター

既存システムが抱える問題を解決するためには、大胆な組織変革や部署の統廃合が避けられず、業務全体の見直しを余儀なくされる。かつての日本も、明治維新によって260年も続いた江戸幕府が滅びた。第二次世界大戦で敗れた後は軍が解体され、アメリカによる統治が始まった。

スーパーリーグ創設は、既存システムを破壊するはずだった。ヨーロッパの伝統社会を、アメリカのビジネスモデルが風穴を開けようとしていた。3~4年前から噂にのぼり、バルセロナ前会長のジョゼップ・マリア・バルトロメウも昨年10月に退任した際、新組織発足近しを匂わせている。

ただ、根まわしが行き届いていなかった。

「なにも聞かされていない」(ミケル・アルテタ監督:アーセナル)
「ニュースを見て初めて知った」(オーレ・グンナー・スールシャール監督:マンチェスター・ユナイテッド)
「すべてを語るには時期尚早といわざるをえない」(ユルゲン・クロップ監督:リヴァプール)

変革を図る場合、組織内で多くの賛同者が必要になるが、今回は彼ら監督でさえ想定外だったようだ。スーパーリーグの発足は薄々感づいていたものの、最終盤という重要な局面に重大な決定が下されるとは、考えていなかったに違いない。

監督の発言により、少なくともプレミアリーグの3クラブは、オーナーシップ主導でスーパーリーグへの参加を決定したことが明らかになった。リヴァプールに至っては、『TRIBUS』(スイスの高級時計ブランド)がスポンサーシップから降りる事態にまで及んでいる。スポンサーにも連絡していなかったのか。

さて、スーパーリーグの発足はヨーロッパ・フットボールの構造を根本的に覆そうとしていたため、伝統を重んじるイングランドではどの国よりも多くの反発を招いた。ボリス・ジョンソン首相から、元イングランド代表のガリー・ネヴィル、ジェイミー・カラガー、さらに各クラブのサポーターまで、まさに “官民一致” の批判が展開されていた。

この、強烈な逆風が影響したのだろうか。スーパーリーグへの参戦を表明していたプレミアリーグの6クラブ、ユナイテッド、マンチェスター・シティ、リヴァプール、チェルシー、トッテナム、アーセナルが、現地時間の20日深夜までに相次いで撤退した。

現場とサポーターの支持を得ていないのだから、当然の決断である。オーナーシップ主導のプロジェクトなど、変革ではなく自己満足にすぎない。

一連の騒動をめぐり、ユナイテッドはエド・ウッドワードCEOが今年12月末日をもって退任すると発表した。ユヴェントスのアンドレア・アニェッリ会長も、近々辞意を表明するという。18日の発表からわずか二日、スーパーリーグ構想は頓挫した。

しかし、不公平な分配金や無理強いが過ぎる日程など、FIFAとUEFAが主導する現在のシステムは問題だらけだ。スーパーリーグ発足に関わった者たち同様、ひょっとするとそれ以上に、特権意識が強い。UEFAが24-25シーズン(3年後!? 遅い!!)から導入するチャンピオンズリーグの新フォーマットも、金銭的なアンバランスが加速するだけの愚策に感じられる。

今回のゴタゴタは、UEFAとFIFAにも責任がある。勝者を気取らず、フットボールのためになにをすべきか、みずからを改めて問いたださなくてはならない。彼らの犠牲になるのはつねに選手であり、一般大衆であることを肝に銘じて……。

文:粕谷秀樹

粕谷 秀樹

ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。

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