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その昔の北米サッカーリーグには、ノーオフサイドゾーンなる独特のエリアが存在していたと記憶している。3年前、FIFAの技術委員長を務めていた当時のマルコ・ファンバステン(現コラムニスト)も、「オフサイドなんか廃止した方がいい」と語っていた。
廃止は少々乱暴だが、多少の改革(変更)は絶対に必要だ。VAR導入後、オフサイドは神経質になりすぎている。センチメートル、しかもその単位が「ひと桁なんじゃね?」と首を傾げ、失笑するケースが増えてきた。
「いちばん近くで見ている審判員の目が裁定の基本」「映像よりも全体の流れ」とかいう相撲よりマシとはいえ、スパイクの先がほんのわずか出ているだけでもオフサイドとは、了見があまりにもあまりにも狭すぎはしないか。そこまでチェックしなくてもいいし、いちいちチェックしているとフットボールの醍醐味が失われる。
アーセナルの元監督で、現在はFIFAの技術発展部門を司るアルセーヌ・ヴェンゲルはこう言った。
「からだの一部が相手DFラインと並んでさえいればオンサイドと判断するよう、ルールを改善しなくてはならない。現役のレフェリーだけではなく、より専門的なキャリアを持つ者を、VARの担当ジャッジに加えるべきだろう」
重箱の隅を楊枝でほじくるようなことは止め、VARのスタッフに元監督やプロ選手のキャリアを持つオーソリティを加えては、と提言していた。不満と疑念しかない現行のルールを改め、試合を円滑に進めるためにも、VARはいくつかの改善が必要だ。
さて、ルールを改正するのなら、交代枠に関しても議論すべきではないだろうか。インテンシティが高く、試合数も増加する一方のいま、3人では限界がある。中二~三日が続く日程になるとなおさらだ。枠を3人から4人に増やし、GKが負傷退場したときにかぎり、全カード投入後でも交代を認めるとか、選手を守るためのルール改正を考えなくてはならない。
また、怠慢なレフェリーが目立つプレミアリーグは体重や年齢を制限し、ミスジャッジが続いた場合には重いペナルティを科すなど、VARとともに生身のレフェリーをチェックする機関も設置すべきだ。腰まわりがタポタポしているジョナサン・モスやリー・メイスンは、世界最高峰を裁く技量、体力を有していない。
シーズン終了後、FIFAはオフサイド、VAR、シンビン制度(一時的退場処分)、試合数の上限などについて検討するという。ルール改正に異常なほど消極的な一派は、近代フットボールを理解していないのだろう。あなたがたが現役のときを基準に考えていると、議論は一向に進まない。試合を円滑に進め、選手を疲弊から守るためには、いまこそ一歩、大きく踏み込まなくてはならない。
文:粕谷秀樹
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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