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VARが導入されると、主審は判定の理由をすぐに声に出してVARに伝えなければならないので負担はかなり増えるようだ。
これまでも何度も説明されているように、VARはすべての反則をチェックするためのものではなく、得点、PK判定、退場、警告退場の人違いの4つの場合における明確なミスジャッジを防ぐためのもので、「ほとんど全ての人が明らかな間違いと思う以外はVARが介入することはない」と説明されている。「Minimum interference」という原則である。
しかし、1月にタイで開かれたAFC U−23選手権では明らかにこの基準からの逸脱があった。
説明会の後には審判員との懇談の場も設けられたのだが、U−23選手権に実際に参加した審判の印象として、あの大会ではVARが「小さな反則を探そうとしていた」という印象があったという。
審判員との懇親の場で審判員たちが口をそろえたのが、VARの難しさだ。暗くて狭いブースの中で画面に90分間集中して過ごすのはかなりの重労働のようで、「気温30度のピッチで走り回る方がマシ」ということだ。ある審判員は「普段は鹿島まで自分で車を運転して行っていたのだが、VARの時は運転しないようにした」という。
そんな環境の中で画面に集中していると、ついつい小さな反則の可能性にも目が行ってしまいがちになるという。
VARもやはり慣れだ。どんな場面でVARが介入し、どんな場面で主審が時間をとってオンフィールド・レビューをするのか……。経験を積み重ねながら、Jリーグならではの基準が作られていくのだろう。本格的導入初年度となれば多少の混乱は生じることになるだろうが、長い目で見ていきたい。
U−23選手権を反面教師として、過度に介入することなく、また必要な時にはしっかりと判定を正せるようにしてほしい。
文:後藤健生
後藤 健生
1952年東京生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程修了(国際政治)。64年の東京五輪以来、サッカー観戦を続け、「テレビでCLを見るよりも、大学リーグ生観戦」をモットーに観戦試合数は3700を超えた(もちろん、CL生観戦が第一希望だが!)。74年西ドイツ大会以来、ワールドカップはすべて現地観戦。2007年より関西大学客員教授
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