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史上最高の戦力をそろえた大分
強者の戦いができる
Fリーグ2019/2020はいよいよプレーオフ決勝2試合を残すのみとなった。13シーズン目の優勝チームが、この土日で決定。J SPORTSも密着マークでこの模様を伝える。
先週は、33節行ったレギュラーシーズンで2位となったバサジィ大分と、3位になったフウガドールすみだの、プレーオフ準決勝2試合が、東京都の駒沢体育館で行われた。レギュラーシーズンの成績ではすみだを大きく引き離していた大分だった(2位大分が25勝3分5敗/勝ち点78、3位すみだが20勝2分11敗/勝ち点62)が、すみだの果敢なプレーに気圧される苦しい2試合だった。
第1試合はすみだに先制ゴールを許しながら、後半に巻き返して3-1の逆転勝ち。ゴレイロ岩永汰紀のPKストップも含めた好セーブ連発がなければ、もっと危ない展開になっていた。第2試合もすみだに多くの決定機を作られる展開となったが、失点を2点に食い止め0-2。2試合合計は1勝1敗でスコアは3-3となったが、レギュラーシーズンで順位が上というアドバンテージで決勝へ進出した。
もっともこの2試合は、大分がすみだの全力を受けて、なお持ちこたえることができたという見方もできる。つまり横綱的な強者のパフォーマンスを見せたのだ。そのくらい今シーズンの大分は戦力が充実しているし、戦い方も安定しているのだ。
チームを率いる伊藤雅範監督も、「選手の質では他のチームと比べて劣っているということがない。フィジカル面でも、しっかりと走れる、戦えるチームになった」と自己分析する。
ピボのレイチ、アラのヴィトン、フィクソのパカットの3外国人は、試合を経るごとにキレ、力強さの面でパフォーマンスが上がっていて、期待できる。そしてチーム創設期からプレーするドリブラー仁部屋和弘やキャプテン白方秀和をはじめ、走り回るレフティー田村龍太郎、長い足で相手の攻撃を絡め取る森洸、アクロバティックな身のこなしで前線で活躍する芝野創太など、30代前半の同世代で経験豊富な選手たちが、チームの中心だ。
これに引っ張られて、絶好調のゴレイロ岩永、左足の強烈シュートを持つ小門勇太、スピードが持ち味の吉田圭吾、多彩なフェイントを持つ瀧澤太将ら、若手選手も好プレーを続けてきた。決勝で待つ名古屋オーシャンズと、別段奇をてらう必要はなく、ガチで戦える状態になったといっていい。
外国人の圧倒的な攻撃力
抑えられると日本人も行く名古屋
レギュラーシーズン1位の名古屋オーシャンズは、大分の挑戦を受ける立場だが、ずっと同じ立場なのでもう慣れたもの。2012-13シーズンから始まり8回目となるこのプレーオフでも、優勝を逃した2016-17シーズン以外は、すべて決勝で待つ身だ。緊張やプレッシャーはあるだろうが、調整面では豊富な経験がある。今週末はベストパフォーマンスを出すとみていいだろう。
今シーズンは自らを「無敵戦隊」と名付けて胸を張ってきた名古屋だが、その名に恥じない圧倒的なプレーを見せてきた。今季は大分も相当な出来だったが、それを上回る28勝1分4敗の勝ち点85でレギュラーシーズン1位。
目立つのは188点も取ってきた圧倒的な攻撃力で、得点ランキングの1位ヴァルチーニョ(43点)と2位ペピータ(37点)が控える。
ヴァルチーニョは簡単なシュートを確実に、難しいシュートも高い確率で決めてくる高性能ストライカー。とにかく決定機を決めまくるので、対応する側は一瞬も気が抜けない。ペピータは剛柔併せ持つドリブルが魅力で、迫力を持って相手ゴール前にボールを運ぶことができる。またランク5位(23点)のラファはここぞというときのトリッキーなプレーで局面を打開し、決定機を演出するので、相手は隙を見せられない。
この3人の外国人が、チームの攻撃を前へ前へと押し進めるが、名古屋の凄いところは、この3人が抑えられると、それならばと次の選手たちが相手ゴールを襲い始める「2段式」になっていることだ。西谷良介、吉川智貴、安藤良平らの、攻守で何でもできる日本代表選手たちが、豊富な運動量をもって加勢し、圧倒的な攻撃力にさらに厚みを加えるのである。
守備面では前に出て行って積極的にボールを奪いにいくケースが多いが、裏を取られてもケガから復帰した日本代表のフィクソ星龍太や、こちらも共に日本代表のゴレイロである、篠田龍馬と関口優志が控え、勝つための盤石の体制が整っている。
またベテラン星翔太や攻撃にアクセントを加える八木聖人も、1月末から行われるスペイン遠征の日本代表メンバーに選出されていて、今回、名古屋は8人もの日本代表選手がそろうことになった。
過去プレーオフは接戦も多く、王者・名古屋が負ける試合もあったが、2試合のトータルでは名古屋が上回る。レギュレーションがどうにかして名古屋以外の優勝チームを作ろうとするのを、ことごとく名古屋が退けてきた格好だ。果たして今回はどんな展開が待っているのだろうか。
名古屋オーシャンズ対バサジィ大分。横綱同士のガチンコ対決が楽しみだ。
文:菊地 芳樹
菊地 芳樹
1971年生まれ、神奈川県出身。ライター&編集者。サッカーの技術情報誌「ストライカーDX」元編集長。フットサルは競技が誕生した1990年代半ばより、日本のトップレベルを追いかけ、全国大会、Fリーグ、アジア選手権、ワールドカップなどを取材。自らも長くプレーを楽しんでいる。
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