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物事には判断基準がある──。
横綱は勝って当たり前で、その昔の日本柔道は金メダルだけが許された。なでしこジャパンも同様だ。2011年ワールドカップで優勝、4年後は準優勝。澤穂希さん、宮間あやさんといったワールドクラスが引退し、レベルが下がったものの、過去2大会の実績は申し分ない。したがって、周囲の見る目は非常に厳しい。期待の裏返しとでもいうべきか……。
「ガッカリした」「勝つ気があるのか」「東京オリンピックの予行演習?」「アスリートは熊谷紗希ただひとり。小手先のテクニックに頼る選手ばかりだ」
日本でもヨーロッパでもキツい批判にさらされている。過去2大会の活躍により、なでしこのフットボールは楽しいと、人々の記憶にインプットされているが、FIFA 女子ワールドカップ 2019の彼女たちは攻守ともに手探りだった。ガッカリされても反論の余地はない。
勝つ気はあるはずだ。しかし、闘志を全面に押し出すタイプが見当たらず、若手に重心を置きすぎた選手選考は、東京オリンピックの予行演習と捉えられても仕方がない。高倉麻子監督なりの考え方があったとしても、今大会のパフォーマンスでは説得力に欠ける。
小手先のテクニックに頼る選手ばかりという批判も的を射ている。インステップでもインサイドでも強く、正確にインパクトできていないため、ミドルシュートは枠を外す。当然、シュートレンジはペナルティエリア内に限られ、対戦相手にすれば守りやすい。
ラウンド16のオランダ戦が1-2という僅差の敗北で、終了間際の失点もデリケートな判定によるPKだった。なおかつオランダの足が止まった70分以降は主導権を握れたため、「よくやった」との声もチラホラ聞こえてくる。開催国フランスでは、岩渕真奈が「プチ・イニエタ」と称賛されたという。
しかし、柔よく剛を制すも今は昔。オランダは歴然とした体格差でなでしこの技術を無力化する。からだを寄せればボールは奪える、少なくともボールホルダーはバランスを崩す、の意識がチームに浸透していた。いや、オランダだけではない。イングランドもほぼ同様のゲームプランだった。ヨーロッパ勢はスピードとパワーで、なでしこをむしり取ったのである。
体格差、狭すぎるシュートレンジ、経験値を軽視した人選など、数多くの課題を露呈しながらなでしこは姿を消した。澤さんのように、チームに安心感をもたらすリーダーはいない。宮間さんのように、左右両足で精度の高いプレースキックを操る(世界でも稀有な存在だった)タレントは、もう二度と現れないだろう。
「実力はもちろん、女子サッカーへの投資、力の入れ方、注目度など、全てで日本は遅れてしまっていると感じました」(抜粋)
オランダに敗れた後、籾木結花は自身の公式twitterに悔しさを綴った。
世界をリードしてきたなでしこがあっという間に追い抜かれ、先頭グループの背中が遠くなりつつある。栽培そのものを見直さなければならない。
粕谷 秀樹
ワールドサッカーダイジェスト初代編集長。 ヨーロッパ、特にイングランド・フットボールに精通し、WWEもこよなく愛するスポーツジャーナリスト。
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