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そして後半19分、とんでもないスーパーゴールが飛び出す。レアル・マドリーの長い、長いポゼッションの末に、左サイドでマルセロが悠々とボールを持ち、切り返してクロス。ロナウドとベンゼマが前に引っ張り、空いたスペースにいたのが、ベイルだ。周囲の時間を止めたジダンのボレーシュートほど美しくはなかったが、野生と迫力にあふれたベイルのバイシクルシュート。満場一致で、チャンピオンズリーグ史上に残る名シュートだった。
そのベイルが、ベンチスタートだった。他にアセンシオもいる。両チーム共に素晴らしいクオリティーなのだが、全体の戦力としては、やはり差がある。それを強く感じたのが、この15分間だった。
ベイル投入で、ここまでのゲームコントロールの仕上げにかかったレアル・マドリー。一方のリヴァプールは、明らかに疲れの見えるミルナーらを、なかなか下げることができない。後半38分、ようやくエムレ・ジャンと交代させたが、彼は負傷明けでプレーに不安が大きい。リヴァプールは結局、90分間で交代カードを2枚しか使えず、手札に欠けた。やはり、チェンバレンが長期離脱で起用できない苦境が尾を引いた。
そして、最後の15分間。ベイルの虚を突くロングシュートが、再びGKカリウスを襲った。不規則に変化するGK泣かせのスーパーシュートに対し、はじき損ね、ゴールに吸い込まれてしまった。カリウスにとっては最悪の夜だ。そもそもこの舞台にたどり着いたこと、ファイナリストであること事態が素晴らしい栄誉なのに、それさえも忘れ去られる残酷さ。辛い。
しかし、涙に暮れ、許しを請うカリウスに対し、リヴァプールのサポーターが拍手を送った場面は、率直に言って感動した。ロブレンやファン・ダイクらは、試合後インタビューの中で「We win together, We lose together」と口にした。世界最高峰の舞台で、この言葉を体現したことは、これからもファンの記憶に残るのではないか。
清水 英斗
サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』、『サッカー観戦力が高まる~試合が100倍面白くなる100の視点』、『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。
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