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2018年ロシアワールドカップ前最後のインターナショナルウイークが終わり、3月31日からイングランド・プレミアリーグが再開される。タイトル争いの方は今季開幕から独走してきたマンチェスター・シティの優勝決定がカウントダウンに突入しているが、その下のUEFAチャンピオンズリーグ(UCL)争い、残留争いの行方はまだまだ興味深い。ここからが本当の戦いと言ってもいいくらいだ。
その両方に関与していない8位・レスターはUEFAヨーロッパリーグ(EL)出場権を目指して今一度、チーム全体にスイッチを入れたいところ。岡崎慎司も3月10日のウエストブロミッチ戦で負傷から復帰。インターナショナルウイークも日本代表に招集されなかったため、クラブでじっくりと調整できたと見られるだけに、ここからのスパートが求められるところだ。
今季の岡崎は昨年8月11日のリーグ開幕・アーセナル戦での1ゴールに始まり、続く19日のブライトン戦での連続ゴールと、非常にいい入りを見せていた。クレイグ・シェークスピア監督は新戦力のケレチ・イヘアナチョらを使って攻撃の新たなバリエーション構築を模索したことから出番が減少した時期もあったが、10月のクロード・ピュエル現監督就任後も徐々に信頼を勝ち取り、ジェイミー・ヴァーディーの絶対的パートナーとしての立場を強固なものにした。
しかしながら、本人が強くこだわっていた得点に関しては、12月13日のサウサンプトン戦の2発を最後に遠ざかったままだ。今年に入ってケガで長期離脱を強いられたこともあったが、現時点で6ゴールというのは本人にとって不本意だろう。この半年間、日本代表から遠ざかっているのも、得点力という部分でヴァイッド・ハリルホジッチ監督が物足りなさを感じているから。自身3度目となるロシアワールドカップが遠ざかりつつあるのは事実と言うしかない。
それでも、日本代表が3月23・27日のマリ・ウクライナ2連戦(マリ)で低調な戦いに修正したことで、岡崎待望論が日に日に高まっている。とりわけ、ハイラインで戦ってきたウクライナのような相手には「裏への鋭さがある岡崎がいれば、もう少しゴール前の怖さを出せたかもしれない」という意見も出ていて、岡崎の存在価値が再び高まってきたのも確かだろう。
今の日本代表は前線から激しくプレスをかけて、高い位置でボールを奪い、タテに速い攻めをしかることを基本戦術としているが、岡崎のように無尽蔵のエネルギーで前からボールを追い回してくれるFWがいれば、後ろは楽になる。ハードワークを辞さない彼なら献身的な守備をしていてもガス欠に陥るはずはない。それも大きなポイントだ。
こうしたプレースタイルをプレミア終盤戦で示し続け、得点を2ケタに乗せるようなことがあれば、逆転代表入りの夢も広がる。本人はここまでの扱いを納得していないだろうが、今回のロシアを集大成にしたい思いは強いはず。それを結実させるためにも、残り試合を有効に活用してほしい。
一方の吉田だが、ケガから復帰して残留争いへの準備を整えているはず。彼もまたインターナショナルウイークは代表に参加しなかったため、コンディションを上げると同時に残り試合でいかにチーム残留へと導くかを熟慮したことだろう。現在のサウサンプトンは総得点29に対して、総失点が44と失点が多いのが気になる。今季上位をキープするバーンリーなどは、総得点は27とサウサンプトンより少ないのに、総失点は26という目覚ましい数字を残している。ビッグ6以外のクラブがある程度の地位をキープしようと思うなら、とにかく守りの修正から入るしかない。そこは百戦錬磨の吉田にはよく分かっているに違いない。
目下、フランス1部最下位のメスにいる川島永嗣、ドイツ・ブンデスリーが1部で17位にいるケルンの大迫勇也など、日本代表の軸を担う面々が残留争いを余儀なくされていることは日本代表にとってもいいことではない。仮にサウサンプトンのチャンピオンシップ降格が決まったら、吉田はメンタル的にも悪い状態でロシアを迎えることになってしまう。それだけは絶対に避けたいところだ。
「ワールドカップ直前のシーズンをどう戦うかが本大会に大きく影響する」と彼は4年前のブラジル大会の時にも話していた。だからこそ、シーズン終盤戦で残留を果たし、自らもレギュラーポジションを奪回して、トップの状態で日本守備の要として戦う必要がある。そういう意味でも吉田の一挙手一投足は大いに気になるところ。さしあたって31日のウエストハム戦で彼はピッチに立つのか否か。そこからしっかりと見ていきたい。
元川 悦子
もとかわえつこ1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、94年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。ワールドカップは94年アメリカ大会から4回連続で現地取材した。中村俊輔らシドニー世代も10年以上見続けている。そして最近は「日本代表ウォッチャー」として練習から試合まで欠かさず取材している。著書に「U-22」(小学館)「初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅」(NHK出版)ほか。
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