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サイクルロードレース コラム 2026年7月9日

苦難乗り越えたオラフ・コーイが今大会最初のスプリントフィニッシュ制す トレーエンはマイヨ・ジョーヌでピレネーへ|ツール・ド・フランス2026 レースレポート:第5ステージ

サイクルロードレースレポート by 福光 俊介
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ツール・ド・フランス

ツール初出場で初区間優勝、オラフ・コーイ

ツール・ド・フランス2026最初の平坦ステージ。現場の関係者や有識者も待ちわびていたようで、ここ2〜3日は「第5ステージはスプリントで決まる」といった論調が続いていた。ようやく迎えた“当日”。セオリー通りのスプリントフィニッシュは、オラフ・コーイ(デカトロン・CMA CGM チーム)が抜群のキレ味を見せ、ツール初出場で初勝利を飾ってみせた。

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「この日のために、昨日までの厳しいステージを乗り越えてきたんだ。ツール・ド・フランスで初めてスプリントするチャンスがやっと来て、しかも勝てたんだ。どんなときでも自分を信じ続けてきた甲斐があったよ」(コーイ)

異色の経歴を持つヴェストロフールのひとり逃げ

レース中の気温が37度まで上がったという、前日の第4ステージ。この日も暑さは変わらない。ラヌムザンを出発し、77回目のツールと登場となるポーまでの158.3km。今大会初めて平坦にカテゴライズされるステージだが、できるだけ消耗度合いを抑えながら先へ進みたい。きっと、プロトン内の大多数が「スプリンターに任せよう」と思っていたに違いない。

バティスト・ヴェストロフール(ロット・アンテルマルシェ)のファーストアタックが容認され、その後長くひとり逃げが続くことになる。前日の好走でマイヨ・ジョーヌを手に入れたトースタイン・トレーエンを擁するウノエックス・モビリティは、リーダーチームとして集団のペースメイクを担う。フィニッシュまで100kmを切ったタイミングで、最大ギャップとなる3分30秒差となった。

逃げるヴェストロフールは26歳。プロロードレーサーとしての活動を本格化させたのが2年前と、年齢からみると遅咲きだ。実はフランス海軍のエンジニアとして働いていた時期があって、サイクルロードレースに注力したのが20歳のときだったという。それ以前にはトライアスロンをやったこともあるそうだが、当時はエンジニアを目指すべく学業優先の日々を送っていた。

そんな異色のフレンチマンは、113.5km地点に設定された中間スプリントポイントを労せず1位通過。その後ろではメイン集団が上位争いを展開し、マックス・カンター(XDS・アスタナ チーム)が先着し全体2位通過。前日勝利し、この日はマイヨ・ヴェールで出走のマッズ・ピーダスンリドル・トレック)が3位で通過して、16点を加算している。

ツール・ド・フランス

バティスト・ヴェストロフールが単独逃げ

レースが終盤に入ってもヴェストロフールは逃げ続けた。132.7km地点に置かれた3級山岳でも1位通過。その頃には、後方で追走グループが形成されたりして全体が活性化。集団の勢いが増したこともあり、ヴェストロフールの独り旅はフィニッシュまで14kmを残して終了。とはいえ、文句なしのステージ敢闘賞だ。

「本来なら今日はアルノー・ドゥリー(体調不良により第3ステージでリタイア)が勝負するはずだった。チーム状況が変わったので、みんなを鼓舞したかったんだ。僕にチャンスをくれたチームに感謝したい。ツールの舞台でひとり逃げができたことは光栄だったよ」(ヴェストロフール)

抜群のスピードと集中力 コーイがツール初勝利

フィニッシュまで10kmを切ると、プロトン全体がスプリントフィニッシュに向けた構えとなっていく。数チームが集団前方で隊列を組んだが、残り8kmからはコフィディスのトレインが先頭に立ち、ミラン・フレティンでの勝負に備える。

そんななか、フィニッシュまで5.4kmを残すタイミングで複数人が絡むクラッシュが発生。トレーエンが足止めを余儀なくされたほか、マイケル・マシューズチーム ジェイコ・アルウラー)や数チームのリードアウトマンが巻き込まれる。その後もいくつかの落車が発生し、自然発生的に集団の中切れも発生。最前線には20人程度しか残らない状況となった。

コフィディスやNSNサイクリングチームなどが前を固めていくと、残り1kmでアーロン・ゲイト(XDS・アスタナ チーム)がカンターを引き上げながら先頭へ。その流れのまま最終コーナーを抜けると、フィニッシュまでは500m。

残り200mを切って敢然と先頭に現れたのはコーイ。何人ものスプリンターが追随したが、コーイのスピードが他選手を大きく上回った。バイク1台分のリードを奪ってフィニッシュラインへ。ツール初勝利の瞬間を迎えた。

「スプリンターの誰もが今日に賭けていたんだ。だけど、僕は最後の数キロですごく集中できていて、自信もあった。フィニッシュラインが見えた瞬間から、ただひたすら全力で踏み続けたんだ」(コーイ)

苦しい時期を乗り越え自信を取り戻す

昨年まではチーム ヴィスマ・リースアバイクで走り、今季から現チームに合流。グランツールの総合成績を視野に入れるヴィスマでは、スプリンターにはなかなかチャンスがめぐってこなかった。育成年代から走り続けてきたチームを離れるのは辛かったけど、選手である以上ツールを走りたい。その一心で環境を変えた。

ツール・ド・フランス

糸杉のある坂を下るプロトン

「チーム ヴィスマ・リースアバイクには今も心から感謝している。すごく思い入れがあるし、選手やスタッフとの関係はいまだに続いている。でも、環境を変えたことで新たな気づきを得られたのも確かなんだ。今までの経験と新しい発見が僕のエネルギーになっているよ。ツールを走れることはとてつもなくエキサイティングだ」(コーイ)

昨年から今年にかけては、ストーブリーグの目玉のひとりでもあった。ただ、今年に入って体調を崩し、シーズンインが5月までずれ込んだ。年明けから2カ月ほどはバイクに乗ることさえも難しかったという。

「体が異様にだるくて、動かすことができなかった。それが2カ月続いて、計画を何度も練り直したよ。だけど、一歩ずつ進んでいくうちに“ツールに間に合うんじゃないか”と自信が湧いてきたんだ。確かに、時間との戦いだった。ツールに出られなくても仕方がない状態だったからね」(コーイ)

チームは“ワンダーボーイ”ポール・セクサスでの個人総合成績を意識している。そんな事情もあり、すべてのリソースをコーイに注ぐことはできない。この日のスプリントも、最後の1kmは単騎でポジショニングに勤しんだ。

「正直に言うと、チームメートを見失ってしまったんだ。僕のために働いてくれる信頼できる仲間がいるから、これからもっと良いスプリントができると思うよ」(コーイ)

このツールには、移籍合流以来初めて一緒に走る仲間もいるという。チームが軌道に乗れば、コーイの強さが一層際立つのではないか。大きな可能性を感じさせる快勝劇になった。

マイヨ・ジョーヌのトレーエン「最高の気分だった!」

最終盤で集団がいくつにも割れたが、トレーエンを含む個人総合上位陣は14秒差のパックでステージを完了した。このステージを終えての順位変動はなく、引き続きトレーエンがマイヨ・ジョーヌを着用する。

ツール・ド・フランス

マイヨ・ジョーヌが似合うトレーエンと誇らしげにまもるチームメート

「膝を少し擦りむいてしまったけど、まあ大丈夫だよ。マイヨ・ジョーヌを着て走ることができて最高の気分だった。チームのみんなが“カッコイイね! 似合っているよ!”と言ってくれたんだ。褒めてもらえてうれしかったよ」(トレーエン)

第6ステージで、プロトンはピレネーへ戻る。1級山岳アスパン、超級山岳トゥルマレを上る1日は、大会前半戦のヤマ場と目される。

「ジャージを守れそうかって? やってみないと分からないよ。うまくいけば良いのだけれど……。暑い中だと何が起こっても不思議ではないし、大会が始まってから長い上りをこなすことがなかったから、体がどう反応するかも見てみたい。自分自身に期待をしながら、全力を尽くしてみるよ」(トレーエン)

文:福光 俊介 from Pau, France

福光 俊介

ふくみつしゅんすけ。サイクルライター、コラムニスト。幼少期に目にしたサイクルロードレースに魅せられ、2012年から執筆を開始。ロードのほか、シクロクロス、トラック、MTB、競輪など国内外のレースを幅広く取材する。ブログ「suke's cycling world」では、世界各国のレースやイベントを独自の視点で解説・分析を行う

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