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「第106回 ツール・ド・フランス」が終了しました。
私が「ツール・ド・フランス」を観る様になってから35年、解説者という「伝える立場」になってからは20年という節目の大会でもありました。
私が高校を辞めてはじめてフランスの地に降り立ったのが1989年の春(17歳)。
1989年の「ツール・ド・フランス」は、故ローラン・フィニョン(フランス)がグレッグ・レモン(アメリカ)に最終日のパリ・シャンゼリゼ(個人タイムトライアル)で大逆転負けを喫し、たった8秒差で総合優勝を失うという歴史的な名勝負が繰り広げられた年です。
最終日の戦いがパリで繰り広げられている時に、私はナント郊外のアマチュアレースにジュニア選手として出場していました。
レースが終わると、ジュニア選手の表彰対象(大人との混合レースなので)となり、表彰式で花束を受け取りました。
そして、とても気になっていた「ツール・ド・フランス」の最終結果をコーチに尋ねると、レモンが大逆転で総合優勝を決めたことを教えてくれました。
実はこの時フランス人のフィニョンではなくてアメリカ人のレモンを応援していた17歳の私は、「忖度」という言葉を知らず、無邪気に「やった〜!!!」と落胆しているフランス人たちの前で大喜びしてしまったのです...
その時の周囲の凍りついた空気は今でもハッキリと覚えています...
あれから30年の月日が経ち、フランス全土が「フランス人のマイヨジョーヌ獲得」の夢をみて再び大いに盛り上がりました。
正直、17歳の時はフランス人の期待と落胆をストレートに感じ取ることはできませんでしたが、今年は彼らの期待と落胆をリアルに感じ取れた気がします...
◯◯選手のファンとか、◯◯チームのファンとか、そういう話ではなく、34年ぶりにフランスが勝つ瞬間を待っている自分がいたからです。
近年、フランス人のツール離れを感じる機会が多く、それは私が17歳の時に観て感じた「ツール・ド・フランス」が徐々に消えてなくなってしまう様な感覚にも繋がっていました...
しかし、今年の「ツール・ド・フランス」にはあの頃と同じ空気が漂っていました。
毎年ツールが終わると「ツールロス」に見舞われますが、今年の「ツールロス」はとても大きくそしてなぜかとても愛おしいものに感じます。
これからもこの素晴らしいレースを追い続けていきたいと思います。
栗村 修
中学生のときにTVで観たツール・ド・フランスに魅せられロードレースの世界へ。 17歳で高校を中退し本場フランスへロードレース留学。その後ヨーロッパのプロチームと契約するなど29歳で現役を引退するまで内外で活躍した。 引退後は国内プロチームの監督を務める一方でJ SPORTSサイクルロードレース解説者としても精力的に活動。
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