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【Cycle*2023 パリ〜ルーベ :レビュー】強いだけでは勝つことができない「北の地獄」、一切の不運を拒絶したマチュー・ファンデルプールが初戴冠
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかフィニッシュ後は泣き崩れたデゲンコルプ
一瞬で夢潰えたデゲンコルプは、集団復帰も叶わず、フィニッシュまで孤独な戦いを余儀なくされた。最終的にマチューから2分35秒遅れの7位で走り終えた。2016年1月の大事故以来の、最高位だった。
接触事故とほぼ同時に、左側から加速を切ったのがワウトだ。鮮やかに先頭へと飛び出した。マチューも当然のように素早く体制を立て直し、軽々と追いついた。過去何度となく繰り広げられてきた一騎打ちが、いよいよ始まろうとしていた。……ところがである!!
「アタックの瞬間まで、僕はすごく調子が良かった。でもカルフール・ド・ラルブルのコーナーを曲がった時、危うく転んでしまうところだった。後輪がパンクしたんだ。瞬時に終わりだと悟った。タイヤ交換で30秒は失ってしまうし、絶好調のマチューとの差を埋めることなんて不可能だから」(ファンアールト)
正確になにが起こったのかは分からなかったが、「なにかが起こったことは分かった」と後の勝者は語る。とにかくそのまま単独で突っ走った。フィニッシュまで15km。ファンデルプールはライバルを全員まとめて背後に置き去りにし、もはやあらゆる不運さえも、振り切ってしまったようだった。手袋無しで、素手で振動を微調整してきた元シクロクロス世界王者は、残り3つの石畳セクターもぎりぎりを攻め続けた。見ているこちらがドキドキさせられるほど。
「正直に言うと、ヒヤリとさせられることなど皆無だったよ。常に制御下にある感覚だった。自分が主導権を握っている時に、僕は怖い思いをするタイプじゃない。前を独走している時だって、きちんとコントロールが効いていた」(ファンデルプール)
残り1.1kmで最後の石畳セクターを抜け出したファンデルプールは、後方に30秒差をつけたまま、満員の屋外自転車競技場へと帰還した。割れんばかりの拍手が鳴り響く中、セメントのバンクで、一周半のウイニングランをたっぷり楽しむ余裕も持てた。最後は周回遅れのファンアールト&フィリプセンの眼の前で、大きく天を仰いだ。
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