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【ジロ・デ・イタリア2024 レースレポート:第11ステージ】ジョナサン・ミランがスプリントで今大会2勝目 平均時速47.171kmの高速レースを制し「チームメートの力があってこその僕の勝利」
サイクルロードレースレポート by J SPORTS 編集部「みんなで勝てたことが本当にうれしい」とチームでの勝利を強調
プロトンはこのステージからイタリア半島を北上。とりわけ、アドリア海沿いへ出てからは強い追い風を受け、レーススピードはかなりの速さとなった。終わってみれば平均時速は47.171km。最後はスプリンターによる競演となったステージ優勝争いは、ポイント賞の証であるマリア・チクラミーノを着るジョナサン・ミラン(リドル・トレック)が制した。第4ステージに続く今大会2勝目。大会序盤戦から好調をキープし続けている。
「チームメートの働きは僕の想像をはるかに超えたものだった。スプリントに向けてベストポジションに運んでもらえた時点で成功したも同然。この勝利はチームメートの力があってこそ。僕を信じてくれる彼らには心から感謝しなければいけないね。僕が一番にフィニッシュして彼らが喜ぶ顔を見られるのが何よりもハッピーだよ」(ミラン)
先頭グループを形成したトマ・シャンピオン、エドアルド・アッフィニ、ティム・ファンダイケの3人
207kmの長距離ステージは、トマ・シャンピオン(コフィディス)のファーストアタックで幕開け。そこにエドアルド・アッフィニ(ヴィスマ・リースアバイク)とティム・ファンダイケ(ヴィスマ・リースアバイク)が追随した。
ヴィスマ・リースアバイクはこの日の朝、ここまで個人総合5位につけ、ヤングライダー賞の首位を走ってきたキアン・アイデブルックスを体調不良により離脱させることを決定。前日にはオラフ・コーイも失っており、総合・スプリント両エースを欠くことに。そして何より、大会前半で離れた2人に続き、これで半数の4選手がリタイア。昨年、全グランツール制覇を果たしたスーパーチームが一転して窮地に立たされている。
それでも、レースは続く。3人の逃げは集団に対して2分前後のタイム差で進行。というよりも、メイン集団がその差を維持しながらコントロールしていたと見るべきだろう。74.5km地点に設置された第1中間スプリントポイントでは先頭3人に続き、集団のトップをミランが確保。全体4位通過としてポイント加算に成功している。
形勢に変化はないまま137.9km地点のインテルジロまで進行。逃げが上位通過したのち、メイン集団もやってきて今度はカーデン・グローブス(アルペシン・ドゥクーニンク)が先着。全体4位とした一方で、ミランは意識的にスプリント参戦せず、フィニッシュ勝負にフォーカスする。この頃には先頭3人と集団とのタイム差は30秒ほどまでに縮小。いつでもキャッチできる態勢となるが、スプリンターチームがあえて前を行く選手たちを泳がせている。
結局、前を走った3人はフィニッシュまで約35kmを残して集団へと戻った。そこからはスプリントに向け隊列を整えるチームが前線へと上がってきて主導権争い。この間、172.5km地点に設けられた第2中間スプリントポイントを迎え、ライアン・マレン(ボーラ・ハンスグローエ)に続いてゲラント・トーマス(イネオス・グレナディアーズ)が通過。2位通過のボーナス2秒をゲットしている。
追い風に乗って速いペースで進行しているプロトン。残り20kmではアンドレア・ピッコロ(EFエデュケーション・イージーポスト)がアタックしたが、リードしたのはわずかな間。集団後方ではフェリックス・グロスシャートナー(UAEチームエミレーツ)とケヴィン・ヴェルマーク(dsmフィルメニッヒ・ポストNL)が落車に見舞われるが、集団はそのまま進む。
熾烈な最終スプリント
残り10kmを目前に、グルパマ・FDJ、ボーラ・ハンスグローエ、ポルティ・コメタが前線を固めて主導権争い。さらにはリドル・トレックも上がってくる。道幅の細いテクニカルなポイントを抜けると、今度はイネオス・グレナディアーズも上がってきた。スーダル・クイックステップはジュリアン・アラフィリップ (スーダル・クイックステップ)が牽引役。マリア・ローザのタデイ・ポガチャル (UAEチームエミレーツ)がフアン・モラノを引き上げる姿も見られる。
残り1kmのフラムルージュではアルペシン・ドゥクーニンクのトレインがスピードアップ。最終局面で向きを変えたことで向かい風の中でのスプリント。いくつものトレインが入り乱れ、残り400mではファビオ・ヤコブセン (dsmフィルメニッヒ・ポストNL)らがクラッシュ。それを避けた選手たちがステージ優勝を争った。
マリア・チクラミーノのジャージ姿でステージ優勝を果たしたジョナサン・ミラン
好位置から飛び出したのは、ティム・メルリール(スーダル・クイックステップ)。ルーク・ランパーティのリードアウトを受けて加速するが、それをすかさずチェックしたのはミラン。あっという間にメルリールをかわすと、風に抗いながらのパワースプリント。マリア・チクラミーノの座をより有利にする会心の勝利となった。
「本来僕の前を走るシモーネ・コンソンニとラインが割れてしまいどうなるかと思ったけど、エドワルト・トゥーンスが冷静に僕を引き上げてくれた。最後は誰の動きをチェックすべきか難しい判断だったけど、メルリールの番手に入って正解だった。我ながら完璧に対処できたと思うよ」(ミラン)
前回は初のマリア・チクラミーノ獲得を果たしたものの、ステージ勝利はひとつにとどまった。今年はそれを上回り、この先量産体制に入ることも十二分に期待できる強さ。ミラン自身も、レベルアップに手ごたえをつかんでいる。
「昨年は僅差で負けることが多かった。小さなミスも多かったけど、重要なのはそこから何を学び、前進するか。環境を変えたこともプラスに働いているのは間違いないね。新たなチームでは、スプリントのために力を注げる人員がそろっており、なおかつ経験豊富。僕が勝つために完璧に仕上げてくれる彼らは本当にすごいんだ!」(ミラン)
2大会連続のマリア・チクラミーノも本格的に視野に捉え始めている。ポイント賞2位のグローブスとは63点差。まだ10ステージ残っているから気は抜けないけど、調子の良さとチームワーク、そして勝負強さがあれば、大仕事を果たせる可能性はかなり高い。
「毎日ポディウムに上がって、新しいマリア・チクラミーノを受け取るのはとても名誉なことだね。このジャージをローマまで自分の手で持って行きたい。残りのステージも集中して走るよ」(ミラン)
フィニッシュまで発生したクラッシュによって集団がいくつにも割れたが、大多数の選手がミランと同タイム扱いとなった。ギリギリでかわしたというポガチャルもマイヨ・ジョーヌを問題なく守っている。レース終盤には集団前方を走る様子が見られたが、改めてその意図を説明している。
第11ステージのスタートの様子。明日の展開はいかに
「スプリンターたちの近くを走る理由? そう心掛けているところもあるのだけれど、今日のようなクラッシュを回避するためでもあるんだ。バブルの中にとどまることが大事だ。どこで何が起こるか分からないから、常に周りを確認しながら走っている。あとは向かい風でミスをしないこと、これも今日の目的だった」(ポガチャル)
スプリントに向けてポガチャルがアシストしたモラノは5位。腰を上げたタイミングでメルリールに進路をふさがれ、減速を強いられている。そして、これによりメルリールは2着でのフィニッシュを抹消され、集団最後尾にあたる89位に降着となっている。
文:福光 俊介
J SPORTS 編集部
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