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【Cycle*2023 パリ〜ルーベ :レビュー】強いだけでは勝つことができない「北の地獄」、一切の不運を拒絶したマチュー・ファンデルプールが初戴冠
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか石畳区間で先頭を走るマッズ・ピーダスン
2つ目の「5つ星」、第11セクターのモン・アン・ペヴェールに入ると、ファンデルプールはさらに2度アタック。集団を7人に絞り込んだ。抜け出したアスファルトゾーンではこの日4度目の加速。ワウトは後輪に即座に張り付き、デゲンコルプ、ピーダスン、ガンナ、キュングもいまだ粘り強くしがみついた。
「ひたすら『ついて行け、ついて行け、ついて行け』って念じ続けた。願わくば、スプリント勝負に持ち込みたかったんだ」(ピーダスン)
だからこそ、その後の石畳セクターでは、ピーダスンが先頭を走る姿が見られた。残り30kmを切った直後にフィリプセンにメカトラがあったせいか、それとも最後の補給や戦術確認に余念がなかったせいか、マチューもしばらくは目立つ動きは見せなかった。もちろん密かにシューズを締め直し、来たるべき時に備えていたし、そんなマチューからワウトは一瞬たりとも目を離さなかった。
走行距離も240kmに近づく頃、この日3つ目にして最後の、「5つ星」が襲いかかる。第4セクターのカルフール・ド・ラルブル。アランベールが鬱蒼とした森に隠された、少々神秘的な聖地ならば、ここはいつだって巨大なパーティー会場だ。ボルテージが完全に振り切れた大量のファンたちの、耳をつんざくような歓声が、身体的に限界に達しつつある選手たちの五感を鈍らせる。
そこまで完璧な協調体制で走ってきたアルペシンでさえも、意思疎通が取れなかった。この地に突入すると同時に先頭を猛烈に引きはじめたフィリプセンが、右脇へと避ける動きと、2段階の加速を試みたマチューの、右側から2回目の加速タイミングが、運悪く重なった。その瞬間にデゲンコルプと接触。34歳ベテランは、地面に放り投げだされてしまった。
「ひどくがっかりしている。これ以上なにも言えない。本当に失望している。これほど最終盤まで勝負に絡めたのは随分久しぶりだったし、フィニッシュ間近で、何だって起こし得たのに」(デゲンコルプ)
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