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サイクル ロードレース コラム 2022年8月4日

【Cycle*2022 ツール・ド・フランス ファム:レビュー】ファンフルーテンが伝説級の走りで記念すべき第1回大会制覇「これが、もっと先へとつながる、大きな出発地点となって欲しい」

ツール・ド・フランス by 宮本 あさか
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記念すべき第1回大会で4賞ジャージを手に入れた4選手

記念すべき第1回大会で4賞ジャージを手に入れた4選手

長く壮大なる物語の、最初の1ページ目を飾るのに、これ以上ないほどふさわしいマイヨ・ジョーヌがいただろうか。伝説級の力強い走りを見せて、アネミエク・ファンフルーテンが、第1回ツール・ド・フランス・ファムの総合覇者となった。女子自転車界は大きく未来へとペダルをこぎだし、フランスに7月の風物詩がまたひとつ増えた。

「夢がかないました。決して簡単な1週間ではありませんでしたし、ジェットコースターのような日々でした。女子ツールの第1回チャンピオンとなれたのは、最高に名誉なことです。これが、もっと先へとつながる、大きな出発地点となって欲しい。この大会を、さらに大きく築き上げていけるよう願っています」(ファンフルーテン)

5人が「ツール・ド・フランス区間優勝」という一生消えない勲章を手に入れ、3人が、子供のころから憧れの黄色いジャージを身にまとった。

初日シャンゼリゼの大集団スプリントを制したのは、現役最速との呼び声高いロレーナ・ウィーベスで、当然ながら全144人の参加者の……いや、世界中の女性プロサイクリストの先頭を切ってマイヨ・ジョーヌに颯爽と着替えた。しかも今季ここまで15勝とーー男子ワールドツアー最多のタデイ・ポガチャルさえ13勝ーー圧倒的な勝利数を叩きだしてきた若きスプリンターは、大会5日目には2勝目も収集する。

そのシャンゼリゼを惜しくも2位で終えた「女性版カニバル」マリアンヌ・フォスは、2日目に勝って「レディ・メルクス」と讃えられた。ロード・シクロクロス・トラック世界選手権の「虹」、ロード&トラックの五輪「金」、欧州選手権の「青」、国内選手権の「赤白青」、ジロの「ピンク」……と様々な色をまとってきたが、ついにツールの「黄」も我がものとした。

「各ステージに全力を尽くすために大会に乗り込み、初日から結果を求めて戦いました。自分のベストを出し切らなければなりませんでしたが、求めていた以上のものが手に入りました。レースの1秒1秒を心から満喫しましたし、この第1回大会の一員になれたことは、大いなる喜びです」(フォス)

イエロージャージのフォス

イエロージャージのフォス

ちなみに2022年ツールのポイント賞は、男女ともに、「大会2日目からマイヨ・ジョーヌを数日間」着て、「ユンボ・ヴィスマ」所属で、「2日目から最終日までマイヨ・ヴェール首位ぶっちぎり」。同国オランダ人出身の23歳ウィーベスから受け継いだ黄色い財産を、最終日前夜にやはり同国の39歳ファンフルーテンに引き渡すまで、35歳フォスは5日間に渡って守り続けた。しかも第1ステージから第6ステージまで、すべて区間5位以内、うち区間優勝2回という驚異の安定性を見せつけ、最後にはエバーグリーンの「緑」に染まった。

つまりこのフランス一周は、オランダの祭典でもあった。デンマーク人のセシリーウトラップ・ルドヴィグとスイス人マーレン・ローセルが区間を1つずつ制し、総合表彰台の上から3番目にポーランド人カタジナ・ニエウィアドマが立ったのを除けば、区間も4賞ジャージもすべてオランダ人!

大会7日目、行く手には3つの1級峠が立ちはだかっていた。女子自転車レース史上でも稀に見るほどの難関コースの、しかも1つ目の峠プティ・バロンで、ファンフルーテンと25歳デミ・フォレリングが前方へと抜け出した。オランダの現女王と次世代エースの、手に汗握るランデブー。

「遠くからアタックすること、これが私のスタイルなんです。それにできる限りタイム差を開きたいと思ったら、最初の峠からアタックする必要がありました」(ファンフルーテン)

大会初日に胃腸の不調を覚え、第6ステージ終了時点で1分28秒差の総合8位に沈んでいたファンフルーテンは、強い覚悟を抱いていた。2019年の世界選手権で105kmもの独走を成功させたことがある。下見を済ませていたから、この先に待っている厳しさも十分に理解していた。決して恐れてはいなかった。残り62km、2つ目の1級プラッツァーヴァーゼルで、大ベテランはただ1人飛び出した。

3つ目の1級グラン・バロンをも単独先頭で乗り越え、フィニッシュ地に笑顔で飛び込んだ時には、フォレリングに3分26秒差を、3位ルドヴィグ以下に5分16秒もの大差をつけていた。わずか20日前にジロのマリア・ローザを獲得したファンフルーテンが、ツールのマイヨ・ジョーヌに袖を通した。

翌日の最終日には、自転車界屈指の激坂で、決定打さえ打ち込んだ。残り5.5km、輝く衣に身を包んだファンフルーテンは、あらゆるライバルを下界へと振り払った。男子ツールはここから本格的なマイヨ・ジョーヌ争いが始まったのだとしたら、女子ツールは、このラ・シュペル・プランシュ・デ・ベル・フィーユが戴冠の舞台となった。

最終ステージで勝利したファンフルーテン

最終ステージをマイヨ・ジョーヌで勝利したファンフルーテン

「勝ちたかった。黄色で、このプランシュ・デ・ベル・フィーユを制することが、最高の締めくくり方だと思ったんです」(ファンフルーテン)

すでに世界選手権と東京五輪個人タイムトライアルで世界の頂点を経験しているファンフルーテンは、こうしてツール・ド・フランス・ファムの第1回大会覇者となり、ジロとツールの同一年制覇「ダブルツール」を成し遂げた史上初めての女性選手となった。また2日連続で最後まで女王に食らいついたフォレリングが、総合2位の座と山岳賞を射止めた。

8日間の「ツール・ド・フランス」を、最後まで走り切った女性選手は109人。大舞台特有の緊迫感にあふれたプロトン内では落車が多発し、初日マイヨ・ジョーヌのウィーベスもまた落車で大会を去っていった。それでも女性たちの力強い走りを、地元フランスでは1区間平均200万人以上のファンがテレビで視聴し、最終日は330万人(瞬間最大視聴数510万人)がマイヨ・ジョーヌの快挙を見届けた。

第1回大会は大成功だった、とレース委員長マリオン・ルスもきっぱりと宣言する。

「シンプルに、最高でした。信じられないような1週間になりました。私たちが何を成し遂げたのかを本当に理解するためには、しばらくかかるかもしれません。毎日美しいスペクタクルが繰り広げられましたし、開催委員会は、このツールを本物のツール・ド・フランスとして扱ってくれました。数日後に反省点を洗い出すつもりですが、今は成功の喜びをかみしめます。来年が本当に待ち遠しい!」(ルス)

文:宮本あさか

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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