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【Cycle*2024 パリ〜ルーベ:プレビュー】あまりにも厳しくあまりに特殊な北の地獄から、先頭で生還する豪傑は誰だ!?
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アルプス3連戦でマイヨジョーヌ交代!灼熱の南仏を走る大会2週目|辻啓のStravaデータから読み解くツール・ド・フランス
ツール・ド・フランス by 辻 啓第10ステージ モルジンヌ・レ・ポルト・デュ・ソレイユ 〜 ムジェーブ
アルプスの山を走るプロトン
アルプス3連戦の初日は2級山岳ムジェーヴ飛行場の山頂フィニッシュ。2年前のクリテリウム・デュ・ドーフィネに登場した際に逃げ切りでステージ優勝したレナード・ケムナ(ドイツ、ボーラ・ハンスグローエ)がこの日も逃げグループに乗り、メイン集団から大きくタイムを奪うことに成功したため暫定マイヨジョーヌに。8分32秒リードで逃げ切りましたが、わずか11秒差でマイヨジョーヌ獲得を逃しています。
ステージ優勝を飾ったのはマグナス・コルト(デンマーク、EFエデュケーション・イージーポスト)で、マッチスプリントで敗れたニック・シュルツ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)がステージ2位。体重68kgのシュルツは2級山岳ムジェーヴ飛行場(登坂距離19.2km・平均勾配4.1%)を平均出力361W、平均心拍165bpm、平均スピード31.1km/hで駆け抜け、最後のスプリントで46秒間平均693W、最大934Wを出力してもがき切りましたが、コルトには敵いませんでした。
この日はメイン集団のトップ選手よりもステージ優勝争いを繰り広げた逃げグループがラスト6kmを短い時間で走っており、9分遅れのメイン集団ではマイヨジョーヌのタデイ・ポガチャル(スロベニア、UAEチームエミレーツ)が先着。離着陸を容易にするために勾配7%の勾配がつけられた滑走路で、ポガチャルはトップスピード43.2km/hをマークしています。
第11ステージ アルベールビル 〜 コル・ド・グラノン・セッレ=シェヴァリ
独走でフィニッシュしたヴィンゲゴー
チームメイトたちのリタイアを除いて、万事順調と思われたポガチャルの大会3連覇への道。しかしアルプスの難関山岳を3つ越える獲得標高差4,000mオーバーの第11ステージでユンボ・ヴィスマの逆襲が始まります。フィニッシュまでまだ60kmを残した超級山岳ガリビエ峠で総合3位ヨナス・ヴィンゲゴー(デンマーク、ユンボ・ヴィスマ)がチームメイトのプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)と息を合わせてアタックを連発。ユンボ・ヴィスマは合計8回アタックし、ポガチャルも4回アタックして応酬する激しい展開に。標高2,642mの今大会最高地点に向かって追い風が吹いていたこともあり、超級山岳ガリビエ峠のSTRAVAセグメント上位8位までがツールのメイン集団内で走っていた選手によって占められています。
トップスピードが100km/hに迫る超級山岳ガリビエ峠の下り区間でユンボ・ヴィスマが再び人数を揃え、逃げグループに入っていたワウト・ファンアールト(ベルギー)はわざわざ下り区間で止まって軽量バイクからエアロバイクに乗り換え、遅れていたプリモシュ・ログリッチ(スロベニア)をメイン集団に引き戻すことに成功。ちなみにファンアールトは最後の登りが始まると再度止まってエアロバイクから軽量バイクに乗り換えていることがデータから伺えます。
ちなみにメイン集団は超級山岳ガリビエ峠を48分01秒(VAM=1,512)で駆け上がっているのに対して、スプリンターを含むグルペットは1時間08分27秒(VAM=1,060)。つまり登りだけで20分近い差がついていることになります。そして約30kmの下り区間をメイン集団は28分40秒で、グルペットは26分10秒で走行。やはり小柄な選手で構成されたメイン集団よりもずっと大柄な選手で構成されたグルペットの方が下りは速い!
そして勝負は超級山岳グラノン峠へ。36年ぶりの登場となるこの難関峠を最速で駆け上がったのは、厚いチーム力に支えられたヴィンゲゴーでした。残り5km地点で加速して独走に持ち込み、逃げていた選手を全員置き去りにしたヴィンゲゴーがステージ優勝。登坂距離11.3km・平均勾配9.2%をの難所を35分56秒、平均スピード18.9km/hで登坂を完了。VAMにすると1733で、推定パワーウェイトレシオは6.1W/kg。最後の15分だけでヴィンゲゴーはポガチャルに2分51秒差をつけています。ポガチャル失速の原因は補給ミスによるハンガーノックとされています。
第12ステージ ブリアンソン 〜 ラルプデュエズ
超級山岳ガリビエ峠を登るプロトン
歴史的な戦いの翌日は泣く子も黙るラルプデュエズ。しかもガリビエ峠、クロワ・ド・フェール峠、そしてラルプデュエズという3連続超級山岳の登場で、その獲得標高差は4,700mに達する厳しさ。レースは最後の超級山岳ラルプデュエズで逃げグループの中から独走に持ち込んだトム・ピドコック(イギリス、イネオス・グレナディアーズ)がステージ優勝しました。下り区間も目一杯攻め、先輩フルームらを置き去りにしたピドコックは史上最も若い22歳でのラルプデュエズ優勝を飾るとともに総合8位にジャンプアップ。東京五輪MTBクロスカントリーの金メダリストで、現シクロクロス世界チャンピオンのピドコックが世界代表する名所を制しています。
ちなみにピドコックの超級山岳ラルプデュエズ(登坂距離13.8km・平均勾配8.1%)の登坂タイムは41分52秒。これに対してユンボ・ヴィスマがコントロールし、そこからアタックしたポガチャルとヴィンゲゴーの登坂タイムは39分10秒でした。参考までに、ラルプデュエズの歴代最速タイムは1995年にマルコ・パンターニが出した36分50秒。2004年にランス・アームストロングが37分36秒を記録しています。
ヴィンゲゴーの山岳アシストとして終盤までペースメイクに尽力した体重61kgのセップ・クス(アメリカ、ユンボ・ヴィスマ)のSTRAVAログを見ると、ガリビエ峠を平均出力290W、クロワ・ド・フェール峠を平均出力291Wで登坂。そして最後のラルプデュエズは体重の6.1倍に迫る平均出力371Wで走行しています。ヴィンゲゴーの活躍の陰には、こうした「他のチームに移籍すれば確実にエース級」のアシストたちの貢献があります。
第13ステージ ル・ブール=ドワザン 〜 サンテティエンヌ
第13ステージを制したピーダスン
獲得標高差が2,000m近くある決して平坦とは言えないステージで、集団スプリントと逃げ切りの可能性が絶妙なバランスで入り混じるレイアウト。フィリッポ・ガンナ(イタリア、イネオス・グレナディアーズ)やシュテファン・キュング(スイス、グルパマFDJ)と言った強力なルーラー系選手が逃げに入ったこともあり、バイクエクスチェンジ・ジェイコの追走も届かずに逃げの展開に持ち込まれました。
アシスト役を解かれ、チーム総合成績を守る意味でも逃げに入ったガンナの4時間25分の平均出力は332W。ラスト1時間は常に400Wを超える高出力で踏み続けていますが(平均出力373W)、終盤に遅れてステージ優勝に絡めず。精鋭トリオのスプリントでマッズ・ピーダスン(デンマーク、トレック・セガフレード)が勝利しています。ステージ2位に入ったフレッド・ライト(イギリス、バーレーン・ヴィクトリアス)のSTRAVAログを見ると、ラスト8kmの平均スピードは50.6km/h。牽制状態に入った残り1kmから36km/h前後の走行が続き、最後はスプリントでトップスピード62.8km/hをマークしながらもピーダスンには敵いませんでした。
第14ステージ サンテティエンヌ 〜 マンド
久々のステージ優勝を飾ったマシューズ
ゴツゴツした中央山塊を走る第14ステージはアップダウンの連続。2級山岳クロワヌーブ(登坂距離3.0km・平均勾配10.2%)。この日も逃げ切りの展開になり、スプリントに持ち込むことなく最後の2級山岳クロワヌーブでアルベルト・ベッティオル(イタリア、EFエデュケーション・イージーポスト)を置き去りにしたマイケル・マシューズ(オーストラリア、バイクエクスチェンジ・ジェイコ)が久々のステージ優勝を飾っています。
ステージ優勝と並行して繰り広げられたのが急坂クロワヌーブでのマイヨジョーヌ争い。ヴィンゲゴーから総合首位の座を奪い返そうとポガチャルがアタックしたもののヴィンゲゴーは離れず。ポガチャルはこの2級山岳クロワヌーブを平均スピード20.2km/hという猛烈なスピードで駆け上がっており、そのVAMは2,065に達しています。
ちなみにステージ中盤の下りでポガチャルは最高スピード98.6km/hをマーク。同じ下りでマイヨアポワを着るシモン・ゲシュケ(ドイツ、コフィディス)は最高スピード102.4km/hというついに三桁オーバーのスピードを記録しています。
第15ステージ ロデズ 〜 カルカッソンヌ
競り合う選手たち
とにかく南フランスらしい暑さが選手たちを苦しめることになった第15ステージ。最高気温が40度に達する酷暑のステージはカルカッソンヌの街中での集団スプリントに持ち込まれ、ジャスパー・フィリプセン(ベルギー、アルペシン・ドゥクーニンク)が念願のステージ初優勝を飾っています。フィリプセンのSTRAVAログを見るとラスト10kmの平均スピードは56.9km/h。スプリントのトップスピードは67.3km/hでした。
ちなみにステージ2位に入ったワウト・ファンアールト(ベルギー、ユンボ・ヴィスマ)のスプリント中のトップスピードは66.4km/h。何度も逃げ、集団スプリントにも絡み、そして山岳ステージでヴィンゲゴーをサポートするファンアールトは真のオールラウンダー。いつの間にか圧倒的なポイント賞のリードを築き上げています。
ツールは3回目の休息日をカルカッソンヌで迎え、決戦地ピレネーへと向かいます。大会最終週には1級山岳ペイラギュードや超級山岳オタカムの山頂フィニッシュが登場。最終日前日の40.7km個人タイムトライアルでマイヨジョーヌ争いもクライマックスを迎えます。
辻 啓
海外レースの撮影を行なうフォトグラファー
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