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【ジロ・デ・イタリア2022 レースレポート:第15ステージ】荒ぶる山の脚を取り戻したジュリオ・チッコーネが独走で山頂勝利「僕にとって新しいスタートが切れた。新しいキャリアの始まりだ」
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか先頭を牽引するイネオスの隊列
はるか後方の総合勢は、すでに6分近いタイム差がついていた。もちろんメイン集団に、一切の動きがなかったわけではない。2番目の登りでは、UAEチーム・エミレーツが、総合2位ジョアン・アルメイダのために猛烈な牽引を開始したこともあった。いわゆる「前待ち」していたダヴィデ・フォルモロが、プロトンに合流して、全力を尽くした。しかしイネオス隊列が冷静に刻むリズムに、まるで対抗することはできなかった。
UAEが攻撃を諦めた直後、残り43km、むしろギヨーム・マルタンが単独で飛び出しを仕掛けた。やはり前日のカオスの中で、総合5位から12位まで一気に陥落したフランス人の行動を、幸いにも誰1人として見咎めなかった。
つまり総合上位勢に邪魔される心配は一切なくなった。だからこそチッコーネは、遠くからひとりで飛び出す決断を下した。目の前のライバルを神経質なまでに警戒したり、イタリア人特有のジェスチャーたっぷりに激昂したりと、常に生々しい感情むき出しで走り続けた27歳のイタリア人はーー3年前の第16ステージでは、共に逃げたヤン・ヒルトが先頭交代に加わらなかったため、怒りにまかせて勝利をもぎ取ったーー、もはや誰かのせいで勝負を左右されたくはなかった。
「自分が感情的な選手だということは分かってる。でも感情こそが、僕を大いに後押ししてくれるんだ」(チッコーネ)
フィニッシュまで19km、最終峠序盤の勾配のきつい部分を利用して、チッコーネはひとり飛び出した。
「もしも数人で山頂にたどり着いた場合、スプリントでは、なにが起こるか決して分からない。それに今日の僕には脚があった。だから1人で行くことに決めた。僕は最善の選択を下したんだ」(チッコーネ)
6年前はプロデビューの年に、自由に、大胆に、21歳で初めてのジロ区間をさらい取った。3年前も「のびのびと」2勝目を手にした。しかし翌年にチームエースの座に押し上げられてからは、まるで思うような成績が出せなかった。2020年ジロは気管支炎でリアイアを余儀なくされ、昨ジロは中盤まで絶好調ながらも、落車で背中と脇腹を強打し、やはり大会を去った。今ジロも地元アブルッツォでの第9ステージで、大きくタイムを失った。肉体的にも苦しんだが、なにより精神的に苦しかった。
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