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過去4度世界王座に君臨し、北京五輪でも金メダルの栄光を手にしたカンチェッラーラは、どうやら本番に向けて順調に仕上げしつつある。しかも、アシストとして「クリストファー・ホーナーのためにたくさん仕事」しつつ、第4ステージ上りフィニッシュで区間2位、第6ステージで区間3位と、ロード種目への対策さえも怠りない。もちろん、マルティンの方も、第6ステージで170km以上の一人逃げをかますなど、好調さをうかがわせる。
2人の次なる激突……つまり世界選手権男子エリートタイムトライアルは9月25日水曜日。地形はこの日とは全く違う。ほぼ完璧なる平坦だ。
そして、タイムトライアル2大巨頭のすぐ後に続いたのが、ポッツォヴィーボだった。第1中間地点ではカンチェッラーラから5秒遅れ、山頂では13秒リードという目を疑うような数字を並べたヒルクライマーは、最終的に1分24秒遅れでフィニッシュラインへと飛び込んだ。
「すごくハッピーさ!午前中に下見をした際に、いい感触を抱いていた。ボクのような小柄な人間には、ちょっと風が強すぎるかなとも感じたけどね。その通り、風の多い下り部分では、カンチェッラーラのように速くは走れなかったけれど、この成績にとてつもなく満足している。おかげでやる気がわいてくる。いい走りが続けられたら、トップ5入りも狙えると思う」(ポッツォヴィーボ)
休養日前のステージを総合10位で終えたイタリア人は、この驚くべき走りで4人を一気にごぼう抜き。総合6位にジャンプアップした。しかも、すぐ上の総合5位ホアキン・ロドリゲスまでは、わずか11秒差に迫った。そう、ロドリゲスは、ツールの山岳TTでこそ目を見張る成績を上げたものの、この日はいつものTT苦手なプリトに逆戻り。カンチェッラーラからは3分01秒を、マイヨ・ロホ候補としては最高成績を記録したヴィンチェンツォ・ニーバリからは、2分36秒を失った。
一方でニコラス・ロッシュは23秒遅れ、前輪パンクという不運に見舞われたアレハンドロ・バルベルデは27秒遅れと、むしろニーバリ相手に好走を見せたと言ってもいい。なにしろこの春のジロで、ニーバリは2度のタイムトライアルを、いずれも好成績で終えている(1度目はマリア・ローザを獲得、2度目は区間を獲得)。この日も、冬季間に強化に励んだというタイムトライアルが、シチリアっ子を総合トップに押し出した。……最終走者のクリストファー・ホーナーから、1分29秒とマイヨ・ロホをむしり取って。
2度失ったマイヨ・ロホ(第2ステージ、第4〜7ステージ)を、ニーバリは見事に取り戻した。休養日に蜂に刺され、両まぶたがぷっくりと腫れあがり、サングラスを外せない状態だったにも関わらず!
「(蜂に刺されたことが)今日のパフォーマンスに影響したかどうかは分からない。今朝になって、腫れもずいぶん引いてきたんだけど、まだ痛みはあった。徐々に良くなってきているし、アレルギーもない。UCIから目の腫れに効く薬品の使用許可をもらってはいるけれど、MPCC(信用ある自転車競技のためのムーブメント、アスタナが参加している団体)が同意してくれるかどうか分からない」(ニーバリ)
2010年ブエルタ覇者の後ろを、33秒差でロッシュが、44秒差でバルベルデとホーナーが追いかける。マイヨ・ロホ候補は、果たして4人に絞り込まれただろうか。2分33秒差のプリトに、いまだ反撃の余地はあるか。
「ここから、いよいよ、重要な山岳ステージがやってくる。タイムトライアルが終わっても、ボクのメインライバルは変わらない。ロドリゲスに、バルベルデ、それからホーナーだ。いや、特にロドリゲスとバルベルデかな。たとえロドリゲスが、今日、大きくタイムを失ったとしてもね」(ニーバリ)
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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