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黒い聖母を抱く山へ。なにより稀代の山岳王マルコ・パンターニが、1999年に、メカトラで足を止めながら、神がかり的な50人抜き優勝を果たした奇跡の山へ――。2014年は、オロパ聖堂の目の前で、エンリーコ・バッタリンが突如として姿を現すと、驚くライバルたちを尻目に勝利をさらい取った。はるか後方のリゴベルト・ウランは、ライバルたちから少しずつタイムを失ったけれど、それでも、カトリックの聖地でマリア・ローザの祝福を受けた。
もちろん、バッタリンは、どこからともなくやって来たわけではない。ゼロkm地点で逃げ出した7人の集団に、すでにバッタリンの姿はあった。それから最終的に出来上がった21人のエスケープ集団に乗って、順調にペダルをまわし続けた。メイン集団には9分半近いリードを奪った。逃げ切るには、十分なタイム差だった。
ニコラス・ロッシュが2級ビエルモンテの山頂間際で飛び出した時も、最終峠の直前でマヌエル・クインツィアートとアルバート・ティマーが仕掛けた時も、エドヴァルド・ボアッソンハーゲンが猛烈にタイム差を埋めにかかった。チーム スカイは逃げ集団に2人送り込んでいた。そして、もう1人のスカイ、ダリオ・カタルドが、BMCレーシングチームのキャプテンがメカトラで思いがけず単独先頭なったティマーを追い上げた。
ゴール前2km。勝負は4人に絞り込まれたかに思われた。大方の予想では、圧倒的に有利なのが、2012年ブエルタで超激坂を制したカタルド。メディアが話題性の勝利を期待したのは、イタリア語の文法的に言うと「パンターニの単数形」となるハリンソン・パンタノ。マルセル・キッテル病気リタイア後も、1勝を求めて奮闘を続けてきたチーム ジャイアント・シマノの列車要員ティマーは少々お疲れ気味で、22歳で初のグランツールを戦うヤン・ポランチは果たしてどれだけやれるのか……。
ところが!ゴール前700m、背後に黄緑色のジャージが見え隠れしたと思うと、猛烈に前方へと競りあがってきた。ラスト400mで、前をほぼ射程圏内にとらえた。そして修道院前の石畳で、もがくカタルドとパンタノを追い抜いた。昨ジロ第4ステージで「雨と追走」の果てに大集団スプリントを制したバッタリンが、今年は、標高1142mの高みで神がかり的な俊足を発揮した。プロコンチネンタルチームのバルディアーニ・チエセエフェにとっては、前日に続くエスケープでの区間2勝目となった。
「上りでは苦しんだ。最も勾配の厳しいゾーンでは、ついていけなくなった。ラスト500mはとにかくエンジン全開だったよ。カタルドとパンターニを追い越した後、ほんの一瞬だけ、一息ついた。だって2人に追いつくために、文字通り100%を尽くしたからね。幸いにもフィニッシュラインの直前30mで追い越せた。それから周りを見回したよ。自分が本当に勝ったのか、後ろから他の選手が追いかけて来ていないかを、確かめるためにね」(バッタリン)
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