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サイクル ロードレース コラム 2014年7月15日

ツール・ド・フランス2014 第10ステージ レースレポート

サイクルロードレースレポート by 宮本 あさか
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そしてこの、とびきり勾配の厳しい山で、マルティンの超人的な牽引作業は終わりを迎える。赤玉を手放し、赤ゼッケンを手に入れ、そして白ジャージに希望を託しつつ……ドイツ人は先頭を下りた。バトンを引き継いだクヴィアトコウスキーは、山道で猛然と加速を切った。エスケープの残党たちがあっというまに散り散りになる中で、「プリト」が追いついてきた。35歳の大ベテランに、ポーランドの新進気鋭は振り払われた。下りで追いつくも、最終峠で、稀代の激坂ハンターにまたしても軽々と付き離された。あと5kmが足りなかった。結局のところポーランドの24歳は、区間勝利も、総合タイム差を縮めることも、マイヨ・ジョーヌも、マイヨ・ブランさえも、成し遂げることは出来なかった。

「目標を達成するためには、脚が必要なのさ。トニーには感謝している。彼はとにかく信じられない仕事を成し遂げた。ただボクが、彼から引き継いだ仕事を仕上げることができなくて、がっかりしてる。ボクだって最善は尽くした。でも最終峠では、自分のスピードにさえ上手く乗れなかった」(クヴィアトコウスキー、チームリリースより)

プリトにも手痛いラストが待っていた。2011年ジロ覇者ミケーレ・スカルポーニ(下りで派手な落車をしたにも関わらず)の力強いアシストを経て、ゴール前3kmで全ライバルを鮮やかに置き去りにしてきたニーバリに、ラスト1kmのアーチの下で、振り切られた。2日連続のロングエスケープで疲れ切った脚では、とても対抗することは出来なかった。

ちなみに前日センセーションを巻き起こした大逃げ組の多くが、この第10ステージは、苦しい1日を強いられた。黄色で革命記念日を走ったギャロパンは、シュヴレール峠でメイン集団から脱落。総合では3分12秒差の総合5位に転落した。総合表彰台候補へと一気に復帰したピエール・ローランもまた、脚の疲れと苦手の激坂に苦しんだ。前日は5分01秒を取り戻し、この日は4分14秒を失った。総合3位に躍り出たティアゴ・マシャドは、落車の犠牲となり、43分06秒遅れの最下位でステージを終えた。制限タイムは37分27秒だったが、悪天候や落車を考慮しての、救済措置が取られたようだ。プリトだけは、あと1kmのところで、区間勝利は逃したけれど……前夜の宣言通り、マイヨ・ア・ポワを身にまとった。

2年前にクリス・フルームが初のツール区間勝利をさらい取った山で、ニーバリは自らがマイヨ・ジョーヌにふさわしい王者であることを改めて証明した。フルームが消え、コンタドールが去ったから、自動的に頂点の座に格上げされたのではない。ニーバリは自らのアタックで、区間とマイヨ・ジョーヌを勝ち取ったのである。

「もしもボクがツール総合優勝を果たしたとき、フルームとコンタドールの落車のせいだ、って言われたら悲しい。ボクはすでにかなりのタイム差をつけていたし、なにより、ボクはコンタドールと一騎打ちする準備が出来ていたんだからね。これからはマイヨ・ジョーヌを守っていく。だからといって、ボクに、もはやライバルがいないわけではない。リッチー・ポートやアレハンドロ・バルベルデは、いまだ戦線に残っている。すでにあるタイム差を、上手く制御して行かなければならない」(ニーバリ、公式記者会見より)

総合2位ポートとの差は2分23秒、3位バルベルデとは2分47秒。その背後には4位ロメン・バルデ3分01秒、5位トニー・ギャロパン3分12秒、6位ティボー・ピノ3分47秒、8位ジャンクリストフ・ペロー3分57秒と、フレンチ総合勢がひしめいている。ニーバリとのマイヨ・ジョーヌ争いよりも、この先はむしろ、表彰台の2番目と3番目の争いの方が熾烈になりそうだ。

英国から走り出し、雨の石畳を経由して、落車とアタック合戦に明け暮れた大会前半戦がようやく終わった。翌日は待望の休養日。疲れを癒し、ほんの束の間のリラックスタイムを楽しんだら、アルプスとピレネーの待つ後半戦へ向かう。

宮本あさか

宮本 あさか

みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。

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