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モドロは発射されなかった。ランプレ列車をマークしていたあらゆるライバルたちは、慌ててモドロの背後から塊で飛び出した。単独で立ちまわったウリッシは、その隙に、道の左端から大胆に加速を切った。
「今朝、目が覚めた時に、自分に言い聞かせたんだ。『僕は行かなきゃならない』って。トップ10入りの感触を、再び味わいたかった。だから9位か10位でも、きっと十分に嬉しかったと思うよ。僕は遠くから飛び出した。行く手を閉ざされてしまうのが怖かったから。幸いにも足の調子は良くて、フィニッシュラインまで先頭をキープすることができた」(ウリッシ、公式記者会見より)
勝利直後の歓喜の雄叫びは、ウリッシが長く辛い日々を過ごしてきたことを物語っていた。昨ジロでは上りフィニッシュを2区間(第5・第8ステージ)制した。イタリア代表監督ダヴィデ・カッサーニに「この秋の世界選手権でリーダーを張れる素質がある」と大いに称賛され、多くの自転車関係者を「もしかして総合争いも行けるのでは?」と期待させたものだ。ところが後日、第11ステージゴール後のドーピング検体から、基準値を超える喘息薬サルブタモルが検出された。治療目的使用の許可を得ていたこと、落車により解熱剤も併せて処方されたことを本人は主張したが、最終的に9カ月の出場停止処分を下された。そして2015年3月28日に、レース復帰を果たした。この勝利は、ウリッシにとって、「解放」に他ならなかった。
もちろん早々と、去年以上に、イタリア自転車界は秋の世界選手権に期待をふくらませている。かつて世界選手権2勝のパオロ・ベッティーニも、どうやら「後継者を見つけた」と興奮しているらしい。
3秒遅れの大集団で、ファビオ・アルやリッチー・ポートと共に、コンタドールは長い1日を終えた。7時間以上も耐え続け、無事にマリア・ローザを守り通した。
「このとてつもなく長い1日を切り抜けることができて、本当に嬉しい。走る前は、それが本当に可能なのかどうかさえ、定かじゃなかったんだからね。もちろん痛みに苦しめられた。レースも4時間目を過ぎた頃には、ハンドルバーのどこに手を置いたらいいのかさえ、分からなくなったほどだった」(コンタドール、チーム公式リリースより)
アルとの2秒差、ポートとの22秒差は変わらなかった。左肩の痛みを抱えつつ、コンタドールはこのわずかなリードを守り通せるだろうか。翌第8ステージには、1級山頂フィニッシュが待ち構えている。
「うん、明日は僕にとって、難しい1日となるだろう。落車前は、この日が来るのを、待ちかねていた。だって僕がアタックに転じられるステージだから。でも今の僕は、自転車の上で静かにしてなきゃならない。ライバルたちがどう動いてくるかを、見ていくしかない」(コンタドール、チーム公式リリースより)
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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