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本人さえ予定もしていなかった、3度目のジロ区間勝利だった。しかも3度目にして初めての、完全なる独走勝利だった。おかげでフィニッシュラインへと向かいながら、ゆっくりと勝利の喜びを噛み締められた。なにしろ前回2回は山頂フィニッシュで、特に2度目はあまりに爆発的なダッシュを披露したせいで、フィニッシュゾーンで横たわったまま動けなくなったほどだったから。
ちなみに1回目は、マリア・ローザ姿のコンタドールが、チームの枠を越えてアシスト役を務めてくれた。2012年ブエルタでは、逆にティラロンゴが、コンタドールの伝説的大逃げ(第17ステージ)をサポートした。しかし、今回ばかりは、ティラロンゴとコンタドールの協力体制は見られないのだろう。
ゴール前13km、後方メインプロトンから、アルがアタックをかけた。コンタドールやポートは難なくついてきた。ランダもアルのもとへと馳せ参じた。いつものように、4人の集団が出来上がった。そして唯一のアシスト格であるランダが、自らのリーダーのために猛烈に引き始めた。そしていつものように、コンタドールやポートは、アスタナ2人の後ろに張り付いた。
ところが今日は、少しだけ勝手が違った。ステージ最後の2級峠を越え、下りに入ると、アルとランダが2人のライバルに先頭交代を命じたのだ。
「最終盤はもっと守備的に走りたかったけれど、でもアルが、仕事に協力するよう言ってきた。後方にいる(リゴベルト・)ウランとのタイム差を開くのは、確かに大切だった。だから僕らは、一緒に仕事をしたんだ」(コンタドール、公式記者会見より)
アルとコンタドールはちょっとした共闘体制を組んだ。ポートも積極的ではなかったけれど――第14ステージの個人タイムトライアルに向けてウランを怖がっているのはアルで、TT巧者ポートではないから――、何度か前を引いた。4人は攻撃しあうこともなく、まとまって最終ストレートへと姿を表した。ただラスト200mで、アルが抜け駆けのようにスプリントを仕掛け、コンタドールとポートから1秒掠め取ることに成功した。
「アルにスプリントされて、1秒差を詰められた。それでも今の自分の状態に満足しているよ。優勝候補たちのタイムギャップはひどく少ないけれど、ウランとの差を開けたし、それに僕はマリア・ローザを着ている。明日は休養日だから、肩と脚をしっかり休められるしね」(コンタドール、公式記者会見より)
4人の協力体制の結果、ウランは46秒失った(アルに対しては47秒)。総合ではコンタドールからの遅れは2分10秒にまで広がった。アルは3秒差、ポートは前日と変わらず22秒差につけている。
ひどくめまぐるしく、濃厚な序盤9日間が幕を閉じた。人生14回目のグランツール(しかしジロは初出場)を戦うトム・ボーネンが、「今まで体験してきた中で、最も厳しいグランツール1週目だったよ」と漏らしたほどだった。生まれて初めてのグランツールに臨んだ石橋学は、1度目の休養日を待たずに、レース現場を去った。
またJ SPORTSレポートに10年以上レースフォトを提供している砂田弓弦フォトグラファーが、ゴール前75km付近の下りヘアピンカーブで、オートバイごと転倒した。幸いにも骨折はなかったものの、腰を2針縫合。右膝に水がたまり、CTスキャンでの再検査が必要とのこと。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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