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アルカンシェルで走れることが楽しくて楽しくてしょうがない、と繰り返すアラフィリップにとって、「世界チャンピオンだから勝たねばならない」という特別なプレッシャーはないようだ。そもそも世界チャンピオンだろうがなかろうが、勝利への執念が増減するわけでもないし、自分の定めた目標も変わらないから。
むしろジャージへの深い敬意が、アラフィリップを突き動かす。
「ティレーノの、マチュー・ファンデルプールが逃げで勝った日(第5ステージ)……すごく寒くて、僕の肉体は完全に凍りついてしまった。ペダルさえうまく踏めなくて、『もう終わりだ』と何度も思ったよ。でも最後まで闘い続けた。だって僕はレインボージャージを着ているのだから。フィニッシュまで走り切るために、戦って、戦って、戦って。走りきれたことが嬉しかったし、このジャージの名誉を守れたことが誇らしかった」
◎慣れていかなきゃならないね
アラフィリップと言えば現役屈指のパンチャーであり、そのトレードマークはご存知、急坂での爆発的な加速。同時に俊敏なダウンヒラーでもある。TTバイクでさえスーパータック(トップチューブに腰を下ろすポジション)で突進してしまうほど。
つまり、この「上り+下りのセット」で、数々の栄光をモノにしてきたわけなのだけれど……。UCI国際自転車競技連合の規則改正により、このスーパータックポジションは、2021年4月1日から完全に禁止される。
「ちょっとがっかりしてる。だって僕自身も普段から使うポジションだから。一旦規則が決定されたら、僕らはそれに従うしかない。だから、うん、今後は注意していく必要があるし、慣れていかなきゃならないね」
失望すると同時に、ルール改正の理由が単純に「プロ選手の安全のため」というなら理解できないともきっぱり。ただ一方では、近い将来「パパ」になる立場として、「若い子どもたちの安全のため」、という方向性であれば納得できると言う。
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