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【宮本あさかのツール2020 レースレポート】サガンとその親衛隊が作戦決行するもステージ優勝には届かず「結局のところ、これが僕らにできる最高のことだったんだ」 / 第14ステージ
サイクルロードレースレポート by 宮本 あさかセーアン・クラーウアナスン
やはりボーラが回収へと向かう。前日の山頂フィニッシュで惜しくも2位で終わったレナード・ケムナが、下りで大胆な追走を披露した。しかも吸収と同時にカウンターを仕掛け、そのまま最終4級のクロワルス坂へと突っ込んでいく。
このリヨンの下町へと誘う残り4.5km地点の急坂で、混乱は最高潮に達する。大逃げ巧者トーマス・デヘントが、珍しくパンチャーの脚を発揮し、ここのところ2日連続でなにかにトライしてきたアラフィリップは、1日目の終盤アタック、2日目の大逃げに続き、3日目はいわゆる「ミラノ~サンレモ風」にチャレンジした。山頂間際で爆発的な加速を行い、そこから一気にフィニッシュ目指して駆け下りようというのだ。
エガン・ベルナルも前方へと突き動かされ、プリモシュ・ログリッチが自ら回収に向かう場面さえあった。なにより「アラフィリップに目を光らせる」作戦を正しく遂行し、ヒルシが得意のダウンヒルで攻めた。おそらく今大会逃がしたくない男ナンバーワンの22歳の動きに、ここぞとばかりにサガンも飛び乗った。
そこにほんの一瞬の間が生まれた。飛び出し、追いかけ、追いつき、顔を見合わせ..そんな小さな隙を突いた。ヒルシが吸収されると同時に、今度は残り3kmでクラーウアナスンが勢いよく前方へと発射した。あまりに切れ味鋭いアタックに、もはや誰も動けなかった。
「このツールでは自分の調子に確信を抱くまでに、ずいぶんと時間がかかってしまった。でも着実に上がって来ていたところだった。それにヒルシの優勝が、チーム内のモチベーションを高めてくれたんだお。あの若者が信じられないようなことを前線でやってのける姿を見ることで、インスピレーションが湧いたし、自分だってちょっとやってみたくなったしね。でもこんなに全てが上手く行くなんて、信じられないよ」(クラーウアナスン)
残念ながらフィニッシュエリアは空っぽだった。ひとりゆうゆうと観客の声を独り占めすることも、表彰台で温かい拍手に感激することも、今年は全てがお預けとなる。なにしろ新型コロナウイルス感染防止のため、最終400mから完全なる無観客で開催されたからだ。「たしかにちょっと不思議な気分だった」とこの日の覇者は認めたが、「みんなの安全のためなら対策を取るべき。それにお客さんがいようがいまいが、僕の勝利の価値は変わらない」とも語る。
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