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「2回目の休養日から、ちょっと気管支炎気味で、咳も出ていた。大会最終盤に入って、プロトンの半分くらいが風邪を引いたり、ウィルスにやられたりしてた。僕もここ数日間は少し調子を落としていた」(フルーム、公式記者会見より)
それにしても、フルームとアルプ・デュエズは、どうも相性が悪い。ちょうど2年前は、この山でハンガーノックアウトになった。キンタナ&ホアキン・ロドリゲスが遠ざかっていく後方で、ポートに引かれ、なんとかマイヨ・ジョーヌを守りきった。今回はキンタナ&バルベルデのタンデム攻撃にさらされ、続いてカウンターアタックで前方待機していたウィナー・アナコナがキンタナを引き、一方のバルベルデはフルームの背中に張り付いてひたすら監視役……、という居心地の悪い状況の中を、やはりポートの背中を見ながらやりすごした。
「頭の中には色々な考えが湧き上がってきた。『さらに状況が悪化していったら?』なんて考えたし、チームメートの後輪についていくことさえやっとだった。限界ぎりぎりだった。110.5kmしかないステージが、まるで300kmもの長さに感じられた。アルプ・デュエズで何度も死にかけた」(フルーム、公式記者会見より)
3週間かけて十分すぎるほど確保していたタイム差が、最後にはフルームを救った。48時間前まで、キンタナに対するリードは3分10秒。24時間前には貯金を2分38秒差にまで減らした。この日は新たに57秒を奪い取られるも、マイヨ・ジョーヌにはいまだ1分12秒の余裕があった。いや、そもそも暴風吹き荒れた第2ステージの終わりには、フルームとキンタナの間には早くも1分39秒のタイム差が存在していたのだ。「結局のところ、僕らは1週目にツールを失ったんだね」とキンタナが語ったように。
伝説的アルプ・デュエズの山の上で、2015年ツール・ド・フランスの総合争いは決した。フルームは2年ぶり2度目のマイヨ・ジョーヌに王手をかけ、2年前と同じように、総合2位&白いジャージはキンタナの手に入った。ブエルタなら2009年総合優勝を含む6度の総合表彰台を経験しているバルベルデは、35歳にして初めてのツール総合表彰台に嬉し涙を流した。マイヨ・ブラン・ア・ポワ・ルージュは初受賞フルームで、マイヨ・ヴェールは4年連続のペーター・サガンですでに確定した。
残す予定行事は、パリでの華麗なるスプリントフィニッシュを迎えるだけ。……天気予報は残念ながら雨。もしかしたら、パヴェ仕立てのシャンゼリゼを全8周回する前に、「タイム計測・総合順位確定」というシャンゼリゼ特別ルールが発動されるのかもしれない。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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