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「僕自身は何も変わっていない。ただ、大きな勝利を手に入れた時のことは、記憶に強く刻まれている。確かにビッグレースで勝利をつかむためには、時には実力だけでなく、人生やレースでの経験がモノを言うのかもしれない」(サガン、公式記者会見)
驚異的な粘り強さを発揮したサガンは、再びアラフィリップを抜き返した。そのままフィニッシュラインでハンドルを投げると、2013年第7ステージ以来となる、久しぶりのツール区間勝利を手に入れた。念願の初マイヨ・ジョーヌも、当然、ついてきた!
「勝つのは決して簡単なことじゃない。マイヨ・ジョーヌを手に入れることも、決して簡単なことではなかったね。初めてツールに出場してから、5年目にしてようやく、こうして人生初のジャージをつかむことができたんだから。でも、今大会の目標は、マイヨ・ジョーヌではない。あくまでも重要なのは3週間走り切って、パリまでたどり着くこと」(サガン、公式記者会見)
ツール初出場2日目にして堂々区間2位に入ったアラフィリップは(サガンはツール初出場2日目で区間勝利を手にしている)、新人賞マイヨ・ブランに袖を通した。ぎりぎりまで粘った果てに区間66位で1日を終えたストゥイヴェンは、山岳賞と敢闘賞、2度の表彰式に臨んだ。マイヨ・ヴェールは当然のように、4年連続で持ち帰ってきたサガンの手元に、舞い戻ってきた。2012年19枚、2013年19枚、2014年20枚、2015年13枚……とほぼ独り占めしてきた世界チャンプは、2016年もこのまま最後まで緑ジャージを手放さないつもりかもしれない。
総合優勝候補はほぼ全員揃ってサガンと同タイムで1日を終えた。ジロ逆転優勝後の疲労回復度が気になるヴィンチェンツォ・ニーバリと、「クラシックタイプのコースは苦手」と告白するティボ・ピノは、それぞれ11秒の遅れを喫した。コンタドールは体の痛みを抱えながら、48秒遅れでフィニッシュラインを越えた。
体調にはまったく問題がなく、むしろメカトラで大きくタイムを失ったのはリッチー・ポートだ。6度目のツール出場にして、生まれて初めて総合「ダブル」リーダーに指名されたというのに、ゴール前4kmでパンクの犠牲となった。ホイール交換のためにずいぶんと長い間道端に置き去りにされ、大部分のライバルから1分45秒遅れでゴールにたどり着いた。フィニッシュ直後には「災難だ、災難だ」とひたすら嘆くだけだった。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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