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【Cycle*2024 フレーシュ・ワロンヌ:プレビュー】唯一絶対の勝負地「ユイの壁」を4回、誰が真っ先に上り詰めるのか
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「グランデ!!」の声が、2度フィニッシュエリアに鳴り響いた。1度目は、チェコチャンピオンジャージを身にまとうロマン・クロイツィゲルが、最終激坂で強烈な牽引を行ったとき。そして2度目は、世界チャンピオンジャージ姿のペーター・サガンが真っ先にフィニッシュラインを越えたとき。声の主は、2人の雇用主であるオレグ・ティンコフ氏。(予定によれば)チームオーナーとして参加する最後のツール・ド・フランスでの、マイヨ・ジョーヌ獲得に、松葉杖を振り回して歓喜した。ただしチームにとっては、決して、両手を挙げて大喜びできる1日ではなかった。総合リーダーのアルベルト・コンタドールが、前日に続き落車に巻き込まれたのだ。雨と、寒さと、激坂のフィニッシュの果てに、48秒を失った。
シェルブールで雨傘の映画が撮られたのは、きっと雨がたくさん降る土地だからに違いない。朝から冷たい霧雨が、ノルマンディの北の外れに降り続いていた。
「嫌なお天気ですね」
と太陽が好きな沖縄っ子の新城幸也は、前日の落車の影響で痛む右肩と、突き指した左手親指をかばいながら走り出していった。スタート地に並ぶ選手たちの肢体のあちこちにも、包帯やテーピング、真新しいかさぶたが見られた。
この日もプロトンは、落車の悪夢から逃れられなかった。スタートから60km地点、濡れた路面へ、大量の選手が投げ出された。リーダー級の選手だけでもホアキン・ロドリゲスにワレン・バルギル、マイケル・マシューズ、トニー・マルティン……。車輪をダメにしたルイ・コスタには、そばにいた新城幸也がとっさにホイールを手渡した。ただ、なにより、衝撃を呼んだのは、すでに前日に中央分離帯に叩きつけられたアルベルト・コンタドールの姿があったこと。
「ハンドルに強く体を打ち付けて、昨日とは反対側を痛めた。フィジカル的にハンディキャップを追ってしまった。自分の思い通りにペダルを回すことができない。僕がすべきことは、気持ちを強く保ち続けること。簡単なことじゃないよ。両方の脚を痛めてしまったんだから」(コンタドール、大会公式リリースより)
その後のプロトンは、いっそう慎重に走った。集団制御は、ディメンションデータのボーイズたちが引き受けた。生まれて初めての黄色で走るマーク・カヴェンディッシュは、前夜の記者会見で、「このマイヨ・ジョーヌを最後までリスペクトし続ける(=最初から失うつもりでは走らない)」と断言していた。たとえ1日の終わりに待ち受けているのが激坂フィニッシュであり、ピュアスプリンターのカヴがジャージを守る可能性はほぼゼロに近いとはいっても。
安全第一に努めたプロトンの前方では、4選手が逃げに挑んでいた。スタートと同時にヴェガール・ブリーン、ジャスパー・ストゥイヴェン、チェザーレ・ベネデッティ、さらに赤玉ジャージ姿のポール・ヴォスが飛び出すと、あっさり2日目の逃げが出来上がった。すぐさま十分なリードを許されると、序盤50kmにぎゅっと凝縮された山岳ポイント収集合戦を、思う存分繰り広げた。
ただ本来なら、山岳賞を守るために逃げに入ったはずのヴォスは、この日はうまく立ち回ることができなかった。1つ目の山はブリーンに取られ、2つ目の山はストゥイヴェンに取られた。3つ目の山が接近してくると、ベネデッティが加速した。残す3人の中で、ヴォスだけが上手く反応できず……。数秒差で必死の追走を試みる間に、ストゥイヴェンに先頭通過をさらわれてしまう。
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