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むしろキッテルにとって、「自分の脚質にぴったり」ではなかったはずだ。しかし、2013・2014年大会ではそれぞれ初日勝利+マイヨ・ジョーヌ&最終日シャンゼリゼ勝利と輝かしい成績を収め、「最速」を誇ったスプリンターは、自らの完全復帰をどうしても勝利で祝いたかった。「ど平坦でしか勝てない」という烙印を消し去りたかったし、なにより自らを迎え入れてくれた新しいチームに、勝利で報いたかった。
「今大会の目標は、1日目の区間勝利で、マイヨ・ジョーヌを取ること。しかし、それは、叶わなかった。2位にしか入れなかった。2日目はアラフィリップがまたしても2位。白ジャージは取れたけれど、黄色には手が届かなかった。3日目は完全に失敗だった。だから昨晩、チームでミーティングを行ったんだ。目標と戦術を見直して、改めて勝利を狙いに行った。今日は僕にとって非常に大切な日になった。復帰の日であり、なにより上り坂で、勝てたんだから!」(キッテル、公式記者会見より)
ぎりぎりまで追いすがりながら、2位に泣いたコカールは、「自分にはミスはなかった。ただキッテルが強かっただけ」と白旗を上げた。
「僕は素直に負けを受け入れられるタイプじゃないんだよ。ほんとむかつくね。区間勝利にまた一歩近づいたって?いや、いつか勝てるかもしれない、じゃ納得できないんだ。僕は今年勝ちたい。今年のツールで、フィニッシュラインで両手を上げたいんだよ」(コカール、ゴール後インタビュー)
サガンは3位でちょっとがっかりしたけれど、「キッテルの勝利は嬉しいね。いろいろな選手が順番に勝つのは、レースにとって良いこと」と模範的な感想を述べた。
なにより、ツールでは2位や3位が多い現役世界チャンピオンは、ツール史上最高の「エターナル・セコンド(永遠の2位)」から、マイヨ・ジョーヌを授与された。そう、マイヨ・ジョーヌこそ1度も着用したことはないけれど、アンクティル→メルクスの最大のライバルとして活躍し続け、マイヨ・ジョーヌのイメージキャラクターとして長年ツールに帯同しているレイモン・プリドールである。今年80歳になった「ププ」は、この日のゴール地リモージュの出身だ。
自らの最終目標であるマイヨ・ヴェールも、わずか1日で取り戻したサガンは、「マイヨ・ジョーヌは目標ではない」と語ってはいるけれど……。
「明日はどうなるかな。まあ、もちろん、できる限り、イエローを守るためのトライはするつもり」(サガン、公式記者会見)
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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