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「飛び乗るには最高の後輪だと考えた。こういった短く爆発的なステージが得意な選手だから。だから彼についていき、一緒にしっかり協力し合ったんだ」(ランダ、チーム公式リリースより)
ランダの任務はむしろ、後方集団に留まったフルームのライバルを働かせること。さらには逃げ切りでリードを稼ぎ、3週目の総合争いをひっかきまわすこと。なにしろ、この日の朝の時点で、総合ではたったの2分55秒遅れでしかなかった。
「でも他の選手と比べれば、ランダとのタイム差は大きかった。だからアタックを見逃した。全員を追いかけることなんて不可能だから。もっとタイム差の小さな選手を重点的に警戒したんだ」(アル、公式記者会見より)
アレッサンドロ・デマルキを追い抜き、バルギルをいったん振り払うと、スペイン人コンビは先頭で本日2つ目の1級峠へと先頭で挑み始めた。その山道では、メイン集団から、ナイロ・キンタナが仕掛ける番だった。総合で4分01秒もの遅れを喫するも、どうにか挽回を目論むコロンビア人の動きに、今度こそバルギルはついていった。この時のスカイはミカル・クヴィアトコウスキーを同伴させたが、現役屈指のダウンヒル巧者に関しては、どうやら「前待ち」要員だった。
「キンタナが仕事の大部分を引き受けたけれど、最後の上りでは、僕も大いに働いた。コンタドールとランダに追いつこうと努力した。山岳ポイントを取るためには、山頂前に、2人を捕らえる必要があったから」(バルギル、公式記者会見より)
希望通り、3つ目の1級峠の、山頂のほんの手前で、コンタドール、ランダ、キンタナ、バルギルは合流を果たす。メイン集団から出来る限りのリードを開きたい前者3人と、3つ全ての1級峠でポイントを積み重ね、あとは第9ステージで逃した区間勝利にもう1度挑戦したいフランス人は、一致団結して最終22.5kmのダウンヒルへと飛び込んだ。下り切った先の、市街地でスプリントに突入するまで、誰もが協力を惜しまなかった。
ダイナミックなスプリントだった。5日前はコーナーのインとアウトの微妙なライン位置に泣かされたバルギルが、この日はラスト250mのUカーブを、大外からまくった。キンタナを2位、コンタドールを3位、ランダを4位(2秒遅れ)に従えて、堂々たるスプリント勝利を決めた。山岳ポイントは通算94ptに伸ばし、2位のランダ以下に61ptの大量差をつけて、5日連続で赤玉ジャージを身にまとった。なにより2005年第12ステージのダヴィド・モンクティエ以来12年ぶりに、フランス選手として、革命記念日に祖国に栄光をもたらした。
「テレビでツールを見ていた子供時代に、数々のアタックで僕の胸を震わせた選手こそが、コンタドールだったんだ。そして今日は、僕が彼を破った!まだ上手く実感できないや。まだ下のカテゴリーで走っていた時、レースを勝つと、『ピストレロ』のジェスチャーをしてたほどだからからね」(バルギル、公式記者会見より)
4人の後方を、8人が追いかけた。マイヨ・ジョーヌ初日のファビオ・アルを筆頭に、総合上位6人全員が勢ぞろいした。しかし、追走には、まとまりが見られなかった。前方の危険人物3人よりも、むしろ後方にいるライバルたちとの数秒差に気を取られた。スカイが数的有利(フルームとクヴィアトコウスキー)を誇ったのも、誰も協力したがらない原因だった。
「まだ大会2週目だというのに、互いに監視し合い、誰もがわずかなタイム差を死守することに忙しかった。残念な状況だったね。そのせいで数人の総合争い復帰を、手助けする結果になってしまった。パリで後悔しなきゃいいけど……。とにかくスカイが2人いて、アルがスカイのお尻にピタリ張り付いている状態で、僕自身もああいう走りしかできなかった。守備的に走って楽しいわけないさ」(バルデ、フィニッシュ後インタビューより)
ダニエル・マーティンとサイモン・イェーツだけが、最後の5kmで抜け出すことに成功し、区間勝者から1分39秒遅れてラインを横切った。ただしランダに総合では逆転され(5位1分09秒差)、それぞれ1つずつ順位を落としている。
またフルーム、アル、リゴベルト・ウラン、バルデ、ルイ・メインチェスは1分48秒遅れでフィニッシュした。もちろんアルは問題なく、人生2度目のマイヨ・ジョーヌ表彰式に臨んだ。フルームが2位の6秒差、バルデが3位の25秒差に変わりはなかった。前区間の補給違反によるペナルティ20秒が取り消されたおかげで、ウランは4位35秒差と、大きく総合表彰台へと近づいた。
また、区間2位のキンタナはボーナスタイム6秒、3位コンタドールはボーナスタイム4秒を手に入れ、総合ではそれぞれ8位2分07秒差、10位5分22秒差へと遅れを縮めている。
「あらゆる意味で、僕にとっては、難しいツールだ。肉体的にはすでに少し疲れているし、精神的にも、ショックを受けている。この先は1日1日を戦っていく。まだ1週間残っている。目的は最善を尽くすこと。区間勝利は本気で欲しい。もちろんだ」(コンタドール、フィニッシュ後TVインタビューより)
写真:積極的な走りを見せたコンタドール
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宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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