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「他の選手たちの調子を見たいと思ったんだ。特に昨日フルームはタイムを大きく失っていたから、彼の脚を試したかった。捕らえられた後は、静かに最終盤を待った。もしかしたらそれ以外のライバルから、数秒を稼げるかもしれないと考えた」(コンタドール、フィニッシュ後インタビューより)
残り27kmでコンタドールが何度目かの加速を終えると、一旦集団には秩序が戻った。スカイが適度なリズムを刻み、ラスト2kmまでは、アルの1分15秒後方を静かに走っていた。
またしてもコンタドールが、戦いに火をつけた。ハリンソン・パンタノに引かれて、一気にスピードを上げた。今度はスカイも、ただ守備的に走るだけではなかった。ジャンニ・モスコンが爆発的な加速を切り、ワウテル・ポエルスもまるでスプリント発射台のようにもがいた。そしてクリス・フルームを前方へと送り出した。前日の不調がまるで嘘のように、いつもの高速ペダル回転が炸裂した。
「ライバルたちが次々とアタックを仕掛けたあとだったから、最後の上りで、チームメートたちにこう告げたんだ。『よし、リズムを上げて、なにが起こるか見てみようじゃないか!』って」(フルーム、フィニッシュ後インタビューより)
マイヨ・ロホの突然の猛攻に、しっかりとついていけたのは、ただコンタドールとマイケル・ウッズだけだった。その他のライバルたちは後方に滑り落ちていき、前方のアルはどんどん追い詰められていった。孤独な戦いのたった12秒後に、フルーム、コンタドール、ウッズの3人組が仲良くラインに滑り込んだ。その4秒後には総合3位ウィルコ・ケルデルマン&4位ザカリンが区間を締めくくった。つまり5位コンタドールは表彰台のライバルからそれぞれ4秒を詰めた。総合2位ニーバリが山頂にたどり着いたのはトリオの21秒後だった。前夜フルームが失ったのが42秒だから、半分を取り戻したことになる。
「ニーバリに対するリードを開けたのは、非常に大切なこと。特に昨日、難しい1日を過ごした後だけに、本当に気分を楽にしてくれた。それに21秒は決して小さくない数字だ。土曜日に向けて、僕には、どんな小さな秒差でも必要だから」(フルーム、フィニッシュ後インタビューより)
まだブエルタは終わりじゃない。総合争いの誰もが同じセリフを口にする。たとえフルームとニーバリのタイム差が1分37秒に開いても、土曜日には、恐ろしいアングリルの激坂が待っている。人生最後の表彰台まで1分17秒に迫ったコンタドールにとっても、まだ戦いは終わってはいない。
宮本 あさか
みやもとあさか。パリ在住のスポーツライター・翻訳者。相撲、プロレス、サッカー、テニス、フィギュアスケート、アルペンスキーなど幼いときからのスポーツ好きが高じ、現在は自転車ロードレースの取材を中心に行っている。
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