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おかげで1分40秒近い余裕を持って、ストゥイヴェンは最終坂に突入した。祖国ベルギーのナショナルデーを勝利で祝うため、決して得意分野とは言えない激坂へ、先頭で登り始めた。
「最初の1㎞は、勝利を信じた。でも、もう脚には、力がまったく残っていなかった。決して諦めなかった。でも、上り最後の1㎞が、僕にとどめを刺した」(ストゥイヴェン、ミックスゾーンインタビューより)
平均10%超の勾配と、強い向かい風、そしてなによりオマール・フライレが、ストゥイヴェンの息の根を止めた。全長3㎞の坂道に入った瞬間に、追走集団内から、スペイン人クライマーは勢いよく飛び出した。単独で追走体制に入ると、がむしゃらなダンシングで観衆の垣根をかき分け、猛烈に前方を追い上げた。
「昨日からすでに調子が上がっているのを感じていたんだ。だから今日は絶対に逃げに乗ろう、ステージ勝利を狙おう、と朝から意気込んでいた。最終坂に入った時、向かい風の合間に、わずかに飛び出すタイミングを見つけた。あとはストゥイヴェンを捕らえるために、全力を尽くすだけだった」(フライレ、公式記者会見より)
フィニッシュ手前2㎞、つまり坂のてっぺんの500m手前で、フライレはついに先頭に立つ。そのさらに500m手前では、20秒ほど後方の集団から、アラフィリップが単独で追い上げをかけていた。残り1.5㎞地点の2級山頂のゲートは18秒差で潜り抜けた。このゲート直前にストゥイヴンに追いついたアラフィリップは、しかし、そのまま全速力でフライレを追い続ける代わりに、ほんの少しストゥイヴンの後輪で一息ついた。その上、あろうことか、ちょっとした牽制状態にさえ入ってしまった。
駆け引きする相手のいないフライレは、ラスト1㎞の下りを、ひたすら猛スピードで駆け下りた。ラスト500mでは早くも勝利を意識し、ジャージの前ジッパーを上げつつも……全力で踏み続けた。残り300mで2度後ろを振り返り、後方の2人を確認すると、ライン手前150mでついに勝利を確信した。
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