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今永昇太の考えを言語化するチカラ
「投げる哲学者」や「今永先生」といわれる理由が少し分かった。3月14日のアスレチックス戦で4回1/3で70球を投げ、3安打無失点、無四球のうえ9三振を奪ったカブス・今永昇太投手(30)の試合後のコメントから、思考を言語化する高い能力の一端を知ることができた。
「紙一重の打球がたくさんあった。そういう不安を連想させるような投球は、あまり良くない」
対戦相手は、昨季のレギュラーシーズンでのチーム打率・223で30球団ワーストだったアスレチック。しかし、今季のオープン戦全体でチーム打率・279で30球団中、4位と好調だ(3月15日時点)。その打線を相手に最速95マイル(約153キロ)の直球で押し、スプリットのようなチェンジアップでほんろうした。だが、投げている本人は「不安を連想」させられながら、マウンドにいたようだ。
投げる哲学者といわれる今永昇太の言葉
「1試合目のドジャース戦、2試合目のマリナーズ戦は、張り切ってマウンドに上った。自分のキャリアを思い返してみると(その日の調子が良くて)自信満々で臨んだ試合ってあんまり良くなかった。ちょっと不安をもってマウンドに上った方が、自分の中ではいいパフォーマンスが出たりとか、その再確認にもなりました」
実際、この日は「試合前のキャッチボールからよかったですし、これが試合でしっかり出せればいいなと思いながらマウンドに上がった」と好調を自覚していた。しかし、その中でも冷静に慎重さを欠くことなく、投げた。ある程度の不安感を持つ方が、好投につながる確率が高い、という。一見、逆説のような真意は何だろう…。
「不安を抱えているときというのは、大胆にはいけない。自信満々のときは(配球に)根拠のないボールを投げてしまいがちなんですけど、自信のないときというのは、しっかり根拠を立てて投げるので、それが自分にとってはパフォーマンスを出しやすいマインドなのかなと思いますね」
自己分析の明確さ。それを言語化する能力。さらに他者に説明するときには、分かりやすく順序立てて、具体的に理解しやすいような話を自然とできる。「今永先生」と言われる由縁だろうか。
各球団の戦力が拮抗するナ・リーグ中地区。2020年以来、4年ぶりの地区優勝、そして2016年以来、8年ぶり4度目のワールドシリーズ制覇を目指す。ナ・リーグは西地区のドジャース、東地区のブレーブスが2強。カブスが割って入る可能性は、十分にある。
文・山田結軌=サンケイスポーツMLB担当
山田 結軌
1983年3月生まれ、新潟県出身。立教大時代にJ SPORTSの野球班でプロ野球中継の現場でスコアブックを書くアルバイトを経験した。サンケイスポーツには2007年4月入社。阪神、広島、楽天などを担当し、2016年2月より大学時代から夢みたMLB取材を続けている。
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