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キューバの先発は、当時も160キロ超の剛速球を投げると頭角を現していた左腕のアロルディス・チャップマン(ロイヤルズ)。後にメジャーを代表する大クローザーになる怪腕は、この時も最速163キロを計測したが、制球が定まらず3回に日本が連打でノックアウト。片岡氏も猛攻に加勢し、ヒットと3得点目のホームを踏んだ。結果、日本が6-0で勝利。「食事を中座して準備した甲斐がありました」と胸を張る。
優勝の舞台裏を話す片岡保幸氏
◆イチローの決勝打は「打つとわかっていた」
最後に決勝戦でのイチローの劇的タイムリーについて尋ねた。準決勝までは打率.211と不調にあえいでいたイチローだが、延長10回表、2アウト2・3塁の場面で、2ボール2ストライクから8球目を捉えるとセンター前ヒット。これで2点の勝ち越しとなり、日本を優勝に導いた。ハラハラしながら見守ったという人も多いだろう。
ただ、片岡氏は「あの場面で打つとわかっていました」とこともなげに語る。「あの場面で回ってくる時点で、ああやっぱりこの大会はイチローさんの大会だったんだって、ベンチから見ていましたから。何球も何球も粘ってワンバウンドの球もファールにしたり。タイミングが合ってる、さすが、ああ打ってくれたという思いでしたね」。
続けて、「さらにすごいのは、あの後もしっかり二塁まで到達していたことです。表情を変えることなく、スキを見せていませんでした」。日本はこの裏、ダルビッシュ有が9回に続いてマウンドへ。無失点に抑えると、選手たちが歓喜の輪を作った。優勝が決まった瞬間に片岡氏が思ったのは、「やった」でも「うれしい」でもなく、「良かった」という安堵だったという。
WBC大会を通じて学んだのは準備の大切さ。あの時のイチローのように、どんな試合のどんな瞬間であろうと、常に準備をしていることの大切さを思い知り、その後の野球人生の礎にもなったという。また、その後で迎えたプロ野球のシーズン開幕戦は、「おかげでまったく緊張しませんでした」と笑顔をのぞかせた。
取材・文:松山ようこ/photo by Keita Yamamoto
松山 ようこ
フリーランス翻訳者・ライター。スポーツやエンターテイメント関連コンテンツの字幕翻訳をはじめ、Webコンテンツ、関連ニュース、企業資料などの翻訳や制作を請け負う。J SPORTSでは、主にMLBや侍ジャパンのほか、2015シーズンより楽天イーグルスを取材し、コラムやインタビュー記事を担当。野球の他にも、幅広くスポーツ選手はじめ著名人を取材。Twitter @yokobooboo
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