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「野球がしたい」
その思いを確かな物にした事が起きた。2013年、プロ野球では楽天の田中将大が無敗の24連勝をマークした。木下雄介は「スゲーやって思いました。こんな事できる人がいるんだって。この世界に行きたい」。
木下は再び野球に向き合った。当時、アイランドリーグの徳島に在籍した(現巨人)増田大輝の勧めもあり、徳島インディゴソックスに入団。そこからプロ野球育成契約から支配下登録まで一気に駆け上がった。
3月21日の出来事を木下雄介は振り返る。「やってしまった瞬間は腕がどうなったのかわからなくて、何かが切れたのか、よくわからない。ただただ激痛でした。人生で一番の痛みだったと思います」。
「やってしまった!って痛みと同時に、不思議と申し訳ないって思ったんです。大した実績もないんですが、ここまで使ってもらってたし、ライデルが開幕間に合わないって状況で俺にとってチャンスだし、絶対つかむって思いでしたから…」。
器具で固定した右肩を見つめながら木下雄介は、「今、自分でも前向きになっているのか、分からないんです」。
「でも、僕には野球をやっていない3年があって、野球エリートの人ならば落ち込むと思うんですが、そんな人たちに比べると僕はすでにどん底を経験している。だから不安ですけどね、下向いてもしょうがないかなって思うんです。」
「復帰できるのか、それがいつなのか、まだイメージはできません。でも、いつの日か、そんな事もありましたね!って笑い飛ばしてやりますよ!」。
現在、木下雄介は、ドクター、トレーナーと話し合い治療プランを模索している。もう一度あのマウンドへ、木下雄介は不死鳥のように舞い戻る日を信じている。そして笑顔で言ってくれるはずだ。
「そんな事もありましたね!」
与田監督の言葉は真意だと思う。「やっぱり必死になってきた選手に活躍してもらいたいじゃないですか」 。木下雄介はここまで必死に野球人生を駆け上がってきた。
ドラゴンズは2021シーズンの開幕を迎えた。開幕1軍に登録されたメンバーはそれぞれの思いを胸に戦う。同時に竜戦士達はその場所に立てなかった仲間への思いも決して忘れない。
文:森貴俊(東海ラジオ)
森 貴俊
1976年愛知県出身。東海ラジオ放送スポーツアナウンサー。ドラゴンズ戦中心のガッツナイターをはじめJリーグ、マラソン等スポーツ実況を担当。原点回帰を胸に、再び強き竜の到来を熱望する43歳。日々体力の衰えを感じるがドラゴンズへの喜怒哀楽は衰え知らず。今年もマイクの前で本気で泣いて怒って笑います!
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