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会社にこんな上司がいたら、背中を見て育つ若者は多いのではないか。今年で10年目の左腕・塩見貴洋のことだ。仕事ぶりはドMでド根性もクールにこなし、チームをもり立てるのが大好きで、面倒見もいい。
ドラフト1位という野球エリートの称号を持つが、長くケガを抱えてきた苦労を知る。痛みがわかるだけに、自分に厳しく他人に優しい。大阪出身らしい気さくな雰囲気で、「言うても、あんま相手にされんなってきた」と自虐の笑いも貪欲に取りに行く元気印の32歳だ。
2018年10月の手術からカムバック
そんな塩見が、開幕前のキャンプではこんな心中を語っていた。
「もう10年目ですよ。でも3年ぐらい腰を痛めてチームにも迷惑をかけてきました。若くないので腹を括ってます。今年がダメだったら…って」。
2018年10月に長年悩まされ続けてきた椎間板ヘルニアの手術をした。手術するかどうか、野球を続けるかどうか。いっそのこと、やめることも考えたという。「でも、まだやりたい。好きなんですよね。だから、また一軍のマウンドに立つって決めて臨みました」。
そうして見事に復帰。2019年シーズンは、術後の影響で3勝1敗だったが、投げれば好投で、防御率はデビュー年の2.85に継ぐ3.16。「復帰当初は中6日がキツかったけれど、だんだん慣れて手応えをつかんだシーズンになった」と明かしていた。
向上心の塊だ。182センチのサウスポーはストレートの球速こそ140キロ前後で特に速くないが(個人的にはクロスファイヤーのまっ直ぐが大好きだ)、フォーク、ツーシーム、スライダー、カーブなど多彩な球種を制球よく投げて、的を絞らせない。相手によって、シーズンによって、攻め方をガラリと変えるなど、挑戦と進化を続ける。
自分より優れた技術を持つ選手には自分からどんどん聞きに行き、逆に聞いてくる選手には何でも教える。「自分は自分だから」と言い放ち、ライバルという考えも持たない。こういう姿勢がチームの底上げに貢献しているんだろうなと言えば、「ぼくなんかより久保(裕也)さんとか、もっと凄い献身的な人がいる」と謙遜する。
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