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わずか1年で天国と地獄を味わった。先発投手の晴れ舞台。昨年3月29日の開幕戦。笠原は横浜スタジアムのマウンドに立った。
そこからわずか1ヶ月半。笠原は病室の天井を見つめていた。4月27日の阪神戦登板回避。そして5月10日、笠原に下された診断は「発作性上室性頻拍」。手術を決断した。
ナゴヤドームの練習中だった。激しい動悸に襲われ、その場にしゃがみ込んだ。「誰にも気づかれたくない」。そう思うのも笠原らしい。異変に気付いたチームトレーナーが駆け寄る。
「どうかしたか?」「少し動悸が…。以前からありましたから大丈夫です」
笠原は「僕の中では、大学の頃からありましたし、よくある事だったんで。また来たなって感じでした。他の人には起きないけど、僕はこれが普通だったんで」
チームからは一度検査をするように言われた。4月26日、笠原は病院に向かった。医師に向かって笠原ははっきり言った。「明日先発なんで。先生、何とかなりませんか?」
しかし、返された言葉は「許可できない」だった。
心臓に向かって右の鎖骨下、そして右の鼠径部からカテーテルを挿入し不正な信号が出ないよう手術が施された。
復帰から2軍戦で4試合。笠原は再び1軍に呼ばれた。7月21日、横浜スタジアム。4回8安打5失点。敗戦投手になった。
笠原は「1軍に呼ばれた事は本当に嬉しくて。でも、不安の方が大きかったですね。2軍で4試合。正直イニングが足りていない。もう少し2軍で投げてからって思いはありました」と話した。不安は的中していた。
復帰後1軍では4試合。1勝2敗、防御率9.60、2軍行きが告げられた。復帰後モチベーションを保つ目標があった。9月3日、新潟での巨人戦。新潟は笠原の故郷だ。
「なんとか新潟で投げたいって思いはあったんですけどね。叶いませんでした。まあ投げていたボールを見ても、どうしようもなかった。1軍に復帰して、やりながら何とか復調したらなって思っていましたが、戻りませんでしたね」。
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