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辰己涼介と渡邊佳明は、今季のチームで最も存在感を放っているルーキーだ。ともに左打ちで野手。互いに大学3年生からよく知っているといい、仲も良い。
プロとなり、今ライバルで仲間となった2人は、試合と勝敗が重みを増す一軍の終盤をどんな思いで奮闘しているのか、話を一緒に聞いた。
浮き彫りになったのは、2人の対照的な個性。それぞれお互いをどのように見て、自身の成長の糧にしているのか。
写真:渡邊佳明(左)、辰己涼介(右)
走攻守が揃ったスター候補として、ドラフト1位で入団した辰己は、ここまでチームトップの盗塁11(9/23現在)もさることながら、外野守備の華でもある空中でのファインプレー、レーザービームのような鋭い好返球を見せては、何度となく周囲の度肝を抜いている。
だから、渡邊佳明も「三拍子が揃った本当にいい選手。それに、バッティングでは初球からガンガンに自分のスイングができる。ぼくと正反対なところです。
見習わなきゃって思います。でも、あの守備範囲、足、それと肩はもう、真似できないです」と両手を上げる。
◆走攻守で高いところを志す
いつからあんな送球ができるようになったのか。と聞くと、なんでもない風に辰己は言う。
「気づいたら投げれるようになったっていうのが正直なところです。特に練習も努力もしてないんです。高校で身体ができあがった時に、強い球が放れるようになったっていう感じですかね。
もともとピッチャーだったのもあって、バランスもよく、身体の成長とともに投げられるようになったんだと思います。親に感謝です」。
他の選手が真似できない武器に恵まれているからこそ、目指すところは高い。
「チームに求められているのは、守備なら広範囲でアウトが取れること。送球での肩の強さもウリなので、進塁や得点の阻止。走塁なら、かき回したりもしていって。
でも、そのためには打率を残して、出塁もしないと。ぼくは全てにおいて、走攻守で高いところを志して、やってほしいと思われていると思って頑張っています」。
◆野次をエネルギーに変える
どこまでも真摯な選手という印象だが、普段はまるで違うという。自虐するように「僕は学生のままな感じ」「基本、おもろい関西人」と言うのだが、話を聞いたのが試合前ということもあってか、そんな雰囲気はまるでみせない。
「お笑いのスイッチは今切ってるんです。野球に集中してますから」。ボケたわけではないのは表情から見てとれた。
関西弁で突っ込んだら?とためらいがちに尋ねると、ちょっと迷いながら、真顔でなぜか「うん」とボケのようなカジュアルな反応が得られたのは、それはそれで面白かったのだけれども(うまくボケを拾えなくてすみません。私も取材スイッチがオンだったので)。
阪神の近本光司と同じ兵庫県立社高等学校を出て、京都の立命館大学の出身。生まれてからずっと関西で野球をやってきた。野次にも一家言がある。
「ぼく、たぶん言いやすいんでしょうけど、めっちゃ野次は言われます。聞くと、やっぱり腹立ちますよ。なんやねんって。
でも、関西で野球を見てきましたしね。プロやし、野次はあってなんぼと思います。むしろ、良いことなんじゃないかと思います。ブチッと(頭に)来る時もありますけど」。
やんちゃな表情をのぞかせながらも、達観したように言い切る。野次が出るほど多くの様々な“お客さん”が来ることの大切さと一筋縄ではいかない野球の醍醐味。
野次は実際、時に選手のやる気に火をつけることもあれば、関西ではただ周りにウケたくて(その場を盛り上げるため)、という人も少なくない。雑多な“声”があるほど、「あってなんぼ」だろう。
お笑いスイッチをオフにして奮闘する辰己は渡邊に倣って言う。「ぼくも爪痕を残せるよう、なんとか少しでも多く主戦で戦って、来年以降につながるような成績を残したい」。
文:松山ようこ
松山 ようこ
フリーランス翻訳者・ライター。スポーツやエンターテイメント関連コンテンツの字幕翻訳をはじめ、Webコンテンツ、関連ニュース、企業資料などの翻訳や制作を請け負う。J SPORTSでは、主にMLBや侍ジャパンのほか、2015シーズンより楽天イーグルスを取材し、コラムやインタビュー記事を担当。野球の他にも、幅広くスポーツ選手はじめ著名人を取材。Twitter @yokobooboo
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