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昨年のメジャーリーグ(ワールドシリーズ)王者、レッドソックスが低迷している。
シーズン開幕から20試合経過時点で、7勝13敗(勝率.350)。
それは今年、メジャー最悪のマーリンズの5勝15敗(勝率.250)に次ぐワースト2位タイ(もう1チームはア・リーグ中地区最下位のロイヤルズ)で、そのマーリンズが1997年にワールドシリーズ制覇を成し遂げた翌1998年、20試合経過時点で6勝14敗(勝率.300)だったことに匹敵するディフェンディング・チャンプのスロースタートとなった。
同年のマーリンズは最終的に54勝108敗(勝率.333)で、同年のメジャー・ワーストを記録した。
ワースト記録といえば、英語版Wikipediaによると「Modern Era」と呼ばれる1900年以降のシーズン・ワースト記録は、まだシーズン160試合制だった時代の1962年にメッツが残した40勝120敗(勝率.250)だという。
年間=6ヶ月で40勝だから、月間では7勝足らずである。当時のメッツ・ファンがどんな思いでチームを応援していたのだろうと思うと、気の毒になってくる。
1900年以前では、1899年に当時ナ・リーグに所属していたクリーブランド・スパイダーズというチームが1899年に20勝134敗(勝率なんと.130!)を記録している。
スパイダーズの記録はおよそ120年前、メッツのワースト記録は半世紀以上も前の話だが、去年はオリオールズが47勝115敗(勝率.290)で歴代ワースト5位になっている。
2003年にはタイガースが43勝119敗(勝率.250)と、「あと1勝」で歴代ワーストのメッツに並ぶところだったので、(スパイダーズはともかく)メッツのワースト記録については昨今のメジャーリーグでも充分に達成可能だと言える。
ア・リーグ東地区3連覇中のレッドソックスには、昨年のア・リーグ最優秀選手ムーキー・ベッツ外野手や、2年連続40本塁打以上のJ.D.マルティネス外野手(指名打者)、(いきなり4連敗したが)元奪三振王の左腕クリス・セール投手など、実績あるベテラン選手が何人もいる「Too good to be worst(ワーストになるには良すぎる)」のチームだ。
誰もがオリオールズやタイガースのようにはならないとは思っているだろう。
ただし、2013年に上原浩治、田澤純一両投手を擁して97勝65敗(勝率.599)でア・リーグ東地区を制し、その勢いを駆ってワールドシリーズになったものの、翌2014年は71勝91敗(勝率.438)で同地区最下位となっているのでどこか、嫌な感じもする
当時のレッドソックスのように、優勝したチームが翌年、低迷することをメジャーリーグでは「Hang Over(二日酔い)」と呼ぶ。
もちろん、本当に選手たちが「二日酔い」しているわけではないが、優勝パレードなどの球団行事が入るお陰で「オフが短くなる」ことに低迷の理由があると見られている。
実際のところ、ワールドシリーズ優勝チームがその翌年の最初の20試合で負け越したのは、過去10年では今年のレッドソックスを入れて3チームしか存在せず、「二日酔い」したチームはそんなに多くない。
ただし、過去10年のワールドシリーズ優勝チームで翌年もプレーオフに進出したチームも、ヤンキース、カージナルス、カブス、そしてアストロズの4チームしか存在しないので、その「二日酔い」が定説になってしまったのかも知れない。
スロースタートから巻き返したチームとなると、2015年の最初の20試合で8勝12敗と負け越しながらも最終的には84勝78敗で地区優勝を争った2014年のワールドシリーズ王者、ジャイアンツのみだ(それでもプレーオフには進出できなかった)。
過去10年のワールドシリーズ王者 | 翌年の20試合 | 翌年の最終成績 |
ヤンキース(2009年) | 13勝7敗 | 95勝67敗(ア・リーグ東地区2位) |
ジャイアンツ(2010年) | 10勝10敗 | 86勝76敗(ナ・リーグ西地区2位) |
カージナルス(2011年) | 13勝7敗 | 88勝74敗(ナ・リーグ中地区2位) |
ジャイアンツ(2012年) | 13勝7敗 | 76勝86敗(ナ・リーグ西地区4位) |
レッドソックス(2013年) | 9勝11敗 | 71勝91敗(ア・リーグ東地区最下位) |
ジャイアンツ(2014年) | 8勝12敗 | 84勝78敗(ナ・リーグ西地区2位) |
ロイヤルズ(2015年) | 12勝8敗 | 81勝81敗(ア・リーグ中地区3位) |
カブス(2016年) | 15勝5敗 | 92勝70敗(ナ・リーグ中地区優勝) |
アストロズ(2017年) | 13勝7敗 | 103勝59敗(ア・リーグ西地区優勝) |
レッドソックス(2018年) | 6勝13敗 | ??? |
そもそもメジャーリーグには、2000年にヤンキースがワールドシリーズ3連覇を達成して以来、連覇したチームが存在しない。
今年のレッドソックスが、ワールドシリーズ連覇どころかプレーオフ進出を逃したところで、それほど驚くようなことではないのかも知れない。
ちなみにレッドソックスのチーム史上ワースト記録は、1932年の43勝111敗(勝率.279)だった。ボストンを本拠地としたメジャーリーグ・チームのワースト記録は、ブレーブス(現アトランタ)がその3年後の1935年に記録した38勝115敗(.248)だそうだ。
ナガオ勝司
1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員
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