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野球 コラム 2019年4月15日

イチロー引退後のマリナーズの成否の鍵を握るのは、日本開幕戦の相手アスレチックス?

Do ya love Baseball? by ナガオ勝司
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How Long(どれぐらい長く)?

それが最大にして唯一の疑問だ。

イチローが引退したものの、菊池雄星投手が先発ローテの一角を占めるマリナーズの快進撃は、いつまで続くのか?

マリナーズは15試合経過時点で、13勝2敗(勝率.867)、メジャー最高成績である。

オフの間、ロビンソン・カノ内野手(現メッツ)やネルソン・クルーズ(現ツインズ)の両主砲、左腕先発で昨季までの実質上のエースだったジェームズ・パクストン投手を放出したチームは、いわゆる「再建モード」に入ったはずだった。

ところが現在、メジャー最高のチームOPS(出塁率+長打率).932を筆頭に各打撃部門の数字は昨年以上で、同13位(ア・リーグ8位)のチーム防御率3.87で例年通り、苦戦している投手陣を引っ張っている。

今のところ誰一人として、2019年のマリナーズが2001年のようにメジャーリーグのタイ記録であるシーズン116勝(もう1チームは1906年のカブス)を挙げるとは思っていないだろうが、チーム関係者も大いに勇気づけられるだろう。

マリナーズが最後にプレーオフに進出したのは2001年のことだった。

同年、日本プロ野球界からのスーパールーキー、イチローを擁して機動力野球を展開したマリナーズ(守護神に佐々木主浩、セットアッパーに長谷川滋利両投手がいた)は、月間別では以下のような圧倒的な勝敗でア・リーグ西地区を制している。

得点 失点 勝率
4月 20 5 138 89 .800
5月 20 7 172 126 .741
6月 18 9 170 131 .667
7月 18 9 135 87 .667
8月 20 9 153 103 .690
9月 15 6 115 76 .714
10月 5 1 44 15 .833
合計 116 46 927 627 .716

その内訳も延長戦で9勝4敗(勝率.692)、1点差ゲームで26勝12敗(勝率.684)と大きく勝ち越しており、5点差以上の試合でも34勝10敗(勝率.773)と圧倒的な数字を残した。

当時のメジャーリーグはナ・リーグ16球団、ア・リーグ14球団とアンバランスだった。

今はア・リーグ西地区に所属するアストロズは、当時はナ・リーグ中地区に所属しており、ア・リーグ西地区はメジャー最小の4球団で地区優勝を争っていた。

マリナーズが今年、ア・リーグ西地区で優勝するか、ワイルドカードを獲得してプレーオフに進出する最大の障壁は、2017年のワールドシリーズ王者にしてナ・リーグ西地区2連覇中のアストロズと、昨季、2枚目のワイルドカードを獲得したアスレチックスだ(エンゼルスやレンジャーズを無視するわけではないが、プレーオフに出てないという事実で、マリナーズとは同じ立場とする)。

アストロズはともかく、アスレチックスがマリナーズの前に立ちふさがっているという状況は、2001年と少し似ている。

当時のアスレチックスは、ビリー・ビーンGM(現編成本部長)がポール・デポデスタ(後のドジャースGM)を右腕に据えて、後に日本で「マネーボール流」などと評されるようになるセイバーメトリクスを根幹にした「分析野球」を導入。(今ではむしろ、「時代遅れ」になるかも知れないが)典型的には「打率より出塁率と長打率が大事」という野球を展開し、前年の2000年から4年連続でプレーオフに進出している。

そんな「プチ黄金時代」のアスレチックスが唯一、地区優勝を逃したのが、マリナーズがメジャータイ記録のシーズン116勝を挙げた2001年だった(もう1チームは1906年のカブス)。

2001年のマリナーズは、同地区のエンゼルスに対して15勝4敗(勝率.789)、レンジャーズに対して15勝5敗(勝率.750)と「カモ」にしているが、アスレチックスに対してだけは10勝9敗(勝率.526)と苦戦した。

得失点差はマイナス1。得点93に対して失点94と「一歩間違っていれば」勝敗が逆転していたと言えるほど戦力が拮抗していた。

実はこの年、アスレチックスもシーズン100勝(102勝60敗、勝率.630)の大台に達していた。マリナーズとは14ゲーム差の地区2位に終わったので目立たなかったが、それはア・リーグ東地区4連覇中だったヤンキースの95勝を凌ぐア・リーグ2位の成績だった(ちなみにヤンキースはその後、連覇を9まで伸ばしている)。

過去5年、アスレチックスが地区2位ながらワイルドカードを獲得してプレーオフに進出したのは2014年と2018年だったが、いずれの年もマリナーズを地区3位に押しやっての結果だった。その間、アスレチックスに競争力がない年の同地区対決では13勝6敗(2015年)、12勝7敗(2016年)、12勝7敗(2017年)と大きく勝ち越しているのに比べ、2014年と2019年に限っては10勝9敗と接戦に持ち込まれている。

そのアスレチックスに日本で連勝して好スタートを切ったマリナーズ。

シーズン序盤の「同地区対決」を制して、何とかこの勢いを持続させたいところだ。

ナガオ勝司

ナガオ勝司

1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員

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