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How Long(どれぐらい長く)?
それが最大にして唯一の疑問だ。
イチローが引退したものの、菊池雄星投手が先発ローテの一角を占めるマリナーズの快進撃は、いつまで続くのか?
マリナーズは15試合経過時点で、13勝2敗(勝率.867)、メジャー最高成績である。
オフの間、ロビンソン・カノ内野手(現メッツ)やネルソン・クルーズ(現ツインズ)の両主砲、左腕先発で昨季までの実質上のエースだったジェームズ・パクストン投手を放出したチームは、いわゆる「再建モード」に入ったはずだった。
ところが現在、メジャー最高のチームOPS(出塁率+長打率).932を筆頭に各打撃部門の数字は昨年以上で、同13位(ア・リーグ8位)のチーム防御率3.87で例年通り、苦戦している投手陣を引っ張っている。
今のところ誰一人として、2019年のマリナーズが2001年のようにメジャーリーグのタイ記録であるシーズン116勝(もう1チームは1906年のカブス)を挙げるとは思っていないだろうが、チーム関係者も大いに勇気づけられるだろう。
マリナーズが最後にプレーオフに進出したのは2001年のことだった。
同年、日本プロ野球界からのスーパールーキー、イチローを擁して機動力野球を展開したマリナーズ(守護神に佐々木主浩、セットアッパーに長谷川滋利両投手がいた)は、月間別では以下のような圧倒的な勝敗でア・リーグ西地区を制している。
月 | 勝 | 負 | 得点 | 失点 | 勝率 |
4月 | 20 | 5 | 138 | 89 | .800 |
5月 | 20 | 7 | 172 | 126 | .741 |
6月 | 18 | 9 | 170 | 131 | .667 |
7月 | 18 | 9 | 135 | 87 | .667 |
8月 | 20 | 9 | 153 | 103 | .690 |
9月 | 15 | 6 | 115 | 76 | .714 |
10月 | 5 | 1 | 44 | 15 | .833 |
合計 | 116 | 46 | 927 | 627 | .716 |
その内訳も延長戦で9勝4敗(勝率.692)、1点差ゲームで26勝12敗(勝率.684)と大きく勝ち越しており、5点差以上の試合でも34勝10敗(勝率.773)と圧倒的な数字を残した。
当時のメジャーリーグはナ・リーグ16球団、ア・リーグ14球団とアンバランスだった。
今はア・リーグ西地区に所属するアストロズは、当時はナ・リーグ中地区に所属しており、ア・リーグ西地区はメジャー最小の4球団で地区優勝を争っていた。
マリナーズが今年、ア・リーグ西地区で優勝するか、ワイルドカードを獲得してプレーオフに進出する最大の障壁は、2017年のワールドシリーズ王者にしてナ・リーグ西地区2連覇中のアストロズと、昨季、2枚目のワイルドカードを獲得したアスレチックスだ(エンゼルスやレンジャーズを無視するわけではないが、プレーオフに出てないという事実で、マリナーズとは同じ立場とする)。
アストロズはともかく、アスレチックスがマリナーズの前に立ちふさがっているという状況は、2001年と少し似ている。
当時のアスレチックスは、ビリー・ビーンGM(現編成本部長)がポール・デポデスタ(後のドジャースGM)を右腕に据えて、後に日本で「マネーボール流」などと評されるようになるセイバーメトリクスを根幹にした「分析野球」を導入。(今ではむしろ、「時代遅れ」になるかも知れないが)典型的には「打率より出塁率と長打率が大事」という野球を展開し、前年の2000年から4年連続でプレーオフに進出している。
そんな「プチ黄金時代」のアスレチックスが唯一、地区優勝を逃したのが、マリナーズがメジャータイ記録のシーズン116勝を挙げた2001年だった(もう1チームは1906年のカブス)。
2001年のマリナーズは、同地区のエンゼルスに対して15勝4敗(勝率.789)、レンジャーズに対して15勝5敗(勝率.750)と「カモ」にしているが、アスレチックスに対してだけは10勝9敗(勝率.526)と苦戦した。
得失点差はマイナス1。得点93に対して失点94と「一歩間違っていれば」勝敗が逆転していたと言えるほど戦力が拮抗していた。
実はこの年、アスレチックスもシーズン100勝(102勝60敗、勝率.630)の大台に達していた。マリナーズとは14ゲーム差の地区2位に終わったので目立たなかったが、それはア・リーグ東地区4連覇中だったヤンキースの95勝を凌ぐア・リーグ2位の成績だった(ちなみにヤンキースはその後、連覇を9まで伸ばしている)。
過去5年、アスレチックスが地区2位ながらワイルドカードを獲得してプレーオフに進出したのは2014年と2018年だったが、いずれの年もマリナーズを地区3位に押しやっての結果だった。その間、アスレチックスに競争力がない年の同地区対決では13勝6敗(2015年)、12勝7敗(2016年)、12勝7敗(2017年)と大きく勝ち越しているのに比べ、2014年と2019年に限っては10勝9敗と接戦に持ち込まれている。
そのアスレチックスに日本で連勝して好スタートを切ったマリナーズ。
シーズン序盤の「同地区対決」を制して、何とかこの勢いを持続させたいところだ。
ナガオ勝司
1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員
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