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野球 コラム 2019年4月1日

メジャー開幕の陰で始まるマイナーリーガー田澤純一の戦い

Do ya love Baseball? by ナガオ勝司
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まだまだ、これからだー。

現地3月26日、田澤純一が、キャンプ終盤に自由契約となったカブスで「メジャーリーグ復帰」を目指すことになった。

「自分のできるだけの結果は出せたと僕は思っているので、なかなか(気持ちを)切り替えるのは難しいと思いますけど、契約してもらえたことは良かったかなと思いますし、これから少しづつ、気持ちを整えつつ、少しでも結果を出して、少しでも早く上がれたらいい」と田澤。メジャーリーグと隣合わせのマイナーリーグ施設で彼は早速、投球練習を行った。マイナー契約のキャンプ招待選手だった時は背番号16。マイナー・キャンプでは33番を背負う(まだ所属先のマイナー球団が決まってないので、背番号は暫定的なものだ)。

田澤はメジャーリーグのオープン戦で6試合無失点という「結果」を残した。去年は苦労していたフォークボールで空振りを奪う場面も多く見られ、キャリア最低だった昨季の不調を脱した印象が強かった。

とりわけ初戦のホワイトソックス戦と最後のドジャース戦で、オープン戦に有りがちなマイナー選手相手ではなく、メジャーの主力選手が相手に三振を獲りまくったことで首脳陣からも高評価された。

「レッドソックス時代のようなスピードはないかも知れないが、今もまだ、あのスプリット(≒フォークボール)で三振を獲る術を備えているし、素晴らしいスプリング・トレーニングを過ごしているのは間違いない」とジョー・マドン監督は言った。

それでも田澤がメジャーに上がれなかったのは、ビジネス上の理由=25人枠が空かなかったからだ。

1月26日に田澤がマイナー契約を交わした後、2月1日に元ヤクルトのトニー・バーネットが最初から40人枠に入るメジャー契約で加入。2月11日には前ブレーブスのブラッド・ブラックがバーネットよりもさらに良い条件でメジャー契約した。

そうなった時点でカブスの救援投手陣は、「9枠に2人の争い」とも「8枠に1人の争い」とも言われる狭き門になった。それも先発ローテーションから外されたタイラー・チャトウッドが開幕までに「トレードされるかも知れない」という可能性を考慮してのことだ。

それでも「枠内」にいる救援投手が不調や怪我などで「欠員」を出せば、オープン戦で結果を残した投手たちの中から誰かが「昇格」することになる。事実、貴重な左腕として過去数年、カブス救援投手陣を支えてきたブライアン・ダンシングがこの春、「DFA≒戦力外」となっている。

もしも健康面で不安があったペドロ・ストロップやカール・エドワーズ・Jr.が同時に開幕に間に合わなかったり、スティーブン・シシェックやブランドン・キンツラーがどうしようもないような不調に悩まされたりした場合は、彼らを怪我人リスト(IL)に入れることで「枠」は(たとえそれが一時的なことだったとしても)空いた。

一見、絶望的に見える「メジャー昇格」の可能性は、少なからずあったのだ。結果としてそれらカブスにとっての「不測の事態」は起こらず、田澤は自由契約になった。彼は他球団での再出発も視野に入れながら、自由契約後の数日間を過ごしていたという。

「またクビかよ、という感じはありましたけど、できる限りのことはやった。家の近くのジムとか行ってたり、投げること以外はできたかなと思います」

自由契約となった球団に戻るのか、それとも他球団でチャンスを掴むのか。どちらも球団側の獲得意志があって成立することなので、その判断は難しい。キャンプで「メジャー昇格」を逃したベテラン選手が、自由契約となった球団にも他球団にも行けずに無職となるケースは決して少なくない。カブスは田澤の自由契約を、とくに発表せず、最初から再契約の方向で動いていた。

「そういうニュアンスはありましたけど、そこはアテにしてもしょうがないかなと思いましたし、このタイミングでクビになっても、どこのチームも25人枠は埋まりつつあるわけで、なかなか難しいとは思っていた」

田澤のようなベテラン選手は皆、メジャーかマイナーかという以前に、プロ野球選手としての「生き残り」を懸けて戦っている。「自由契約」は最悪の結果だが、マイナー契約を結び直したことで、その戦いを続ける「資格」を得たということになる。

田澤のキャンプ(オープン戦)は、無駄ではなかったのだ。

「正直、自分なりの結果は出せたと思っていたので、こんだけ大勢の中で野球するのも嫌だなと思いますけど、あまり考えすぎず、今、与えられたところでやりたいと思います。働くところはここしかないんで、だったら自分のやりたいことをやって、少しでも結果を出すことが大事だと思うんで、なかなか気持ちの切り替えは難しいけど、やるしかない」

そう、やるしかない。

契約の不利やメジャーの都合次第という「昇格事情」は百も承知。

理不尽が普通という圧倒的な逆風の中、田澤純一は再び、戦い始めるー。

ナガオ勝司

ナガオ勝司

1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員

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