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野球 コラム 2019年3月25日

イチローがいないメジャーリーグ

Do ya love Baseball? by ナガオ勝司
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イチローが引退したー。

第一報はアメリカのメディアではなく、日本の共同通信社だった。3月21日、東京ドームで行われたアスレチックス戦の試合後には本人が記者会見を行い、現実のものとなった。

イチローが試合中にベンチに退く時の、スコット・サービス監督の「粋な計らい」が話題になった。観客の前に選手を連れ出してから、いわゆる「カーテンコール≒拍手と声援」のために引っ込める。Respect=古き良きメジャーリーグ文化だ。

今回だけじゃない。45歳の偉大な野球選手に「メジャーリーグ」は最大級の「リスペクト」を払ってきた。彼らは去年、イチローのマリナーズ復帰から、会長付き特別補佐役への転身にも異議は唱えなかった。イチローが今年のオープン戦でヒットが出なくても、日本開幕戦の出場選手枠に入った是非など問わなかった。

いつか、引退するのは分かっている。それならば、小言など言わず、彼自身の手で「幕引き」を決めさせてあげたいー。キャンプ終盤、イチローの周辺にはそんな空気が流れていた。

イチローにとって、今年のオープン戦はそれに抗うための戦いだったと思う。自分の意志とは無関係に、周囲が「引退」に向けて動き出す中、彼はヒットを打たなければならなかった。イチローは引退会見で「過去に引退を考えたことはないのか?」という質問に対し、「ヤンキース時代の話」として、こう答えている。

「クビになるんじゃないか。毎日をそんなメンタリティーで過ごしていた」

それはきっと、今年のキャンプも変わらなかったのではないか。

そして、「結果」は出なかった。どんな状況でも「結果」を出し続けてきたイチローが、周囲を驚かせてきたイチローが、ついに力尽きたのだ。

日本開幕戦は、メジャーリーグが用意した「最後の花道」になった。イチローは覚悟を決めて、その道の上を歩いた。その姿を見送った我々は、これからしばらく、「イチローの功績」や「イチロー語録』を語り尽くすことになる。

イチローの功績を絶賛することも、彼の言動を称賛することも、今の流れのままにやり尽くすことになる。その先には、何があるのか。

ファンやメディアが今、発している「熱い思い」も、やがては消えていく。その時、我々は「寂しさ」を感じるのだろうか。イチローがいないメジャーリーグを、どう捉えるのだろうか。

きっと大丈夫だ。

ダルビッシュ有が怪我から完全復活し、田中将大が開幕投手の大任を果たす。前田健太や平野佳寿がそれぞれのチームで重要な役割を担い、菊池雄星が新しい風を吹き込む。そして、大谷翔平が打者として復活する。

メジャーリーグは日本人にとって、まだまだ面白いー。

ナガオ勝司

ナガオ勝司

1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員

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