人気ランキング

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

メルマガ

お好きなジャンルのコラムや
ニュース、番組情報をお届け!

メルマガ一覧へ

コラム&ブログ一覧

野球 コラム 2019年1月6日

菊池雄星の背中を見ている子供たち

Do ya love Baseball? by ナガオ勝司
  • Line

埼玉西武ラインズからポスティング制度を行使して「メジャー挑戦」を目指していた菊池雄星(27)が3日、シアトル・マリナーズと契約した。

日米の報道によると総額4300万ドル(約47億3000万円)の3年契約で、4年目の2022年は菊池が単年1300万ドル(約14億3000万円)のオプション(選択契約)を持っているという。変則的なのは23年以降で、2023年からの3年総額5300万ドル(約58億3000万円)のオプションを球団が持っているという。総額では約116億円に達する大型契約だ。

契約内容はともかく、「メジャー挑戦」という夢がかなって良かったと思う。

ご存知の通り、菊池は大谷翔平と同じ岩手県花巻東高の出身で、2009年の卒業時には「メジャーに行きたい」と公言しながら、涙をのんだ経験を持っている。

当時、国内12球団に加え、メジャーの8球団と面談した菊池は「どちらも素晴らしいと思いました。今は決めかねているんで、どちらも行きたいのが正直な気持ち」と迷いを正直に口にしている。

日本プロ野球へ進むことを決意した時の会見で「まだまだ自分のレベルでは世界で通用しないと思いました。日本の方全員に認められてから、世界でプレーしたいと思いました」と表明したのは、夢と現実の狭間で揺れる十代後半の若者の心情を露わにした。

そんなこともあってか、マリナーズ入団会見での彼はとても爽やかな表情をしていた。

「夢をかなえようと思い、英語も勉強してきた。自分の強みは真っすぐとスライダー。昔からメジャーの試合を見てきたので、メジャーの選手の球種、フォームだったりを真似しながらプレーしてきた」

大半の質疑応答を英語でこなし、通訳を介した英語の質問にも彼は英語で答えた。

「聞きづらくてすいません。最高峰の舞台でプレーするにあたって、文化や環境、考え方の違いはあるが、いつか最高峰の選手たちと英語で話せるようになれればと思って、少しずつ勉強してきました」

メジャーリーグという夢の舞台に到達するため、彼は涙をのんだあの日からコツコツと地道な努力を続けてきたのだと思う。

そういう姿をきっと、野球少年たちが見ている。

「若い内からメジャーリーグを目指そう!」という意味ではない。高い目標を設定して、そのために一歩ずつ前進していくこと。そして、紆余曲折あった後にその目標に到達したことだ。

そういう姿を隠さず見せてきたことですでに、菊池は子供たちの「良き見本」の一つとなっている。

「高校1年のときに目標設定をして(花巻東の佐々木監督と)『一緒にメジャーを目指そう』と話した。15歳のときから12年、励ましてもらった」

メジャー志望を捨てての日本プロ野球は当初、左肩痛に悩まされたり、暴力事件に巻き込まれたり。ひとつ間違っていれば、決して少なくない他の新人選手同様、そのまま埋もれていた可能性だってある。

だからこそ、彼はマリナーズ入団会見でわざわざ、「9年間、日本でプレーしたが、順調にいったわけではなかった」と素直な言葉を口にしたのだろう。

契約内容を見ても分かる通り、菊池にはすでに「ローテーションの一角を担う左腕」という評価が付いている。マリナーズは菊池が日本プロ野球からメジャーリーグへ適応することに幾らか寛容な気持ちでいると同時に「すぐに結果が欲しい」。

それにどう応えていくのか―。

「日本で積み上げてきたものをしっかりと出せるように、まずはそこが一番。その中で、いろんな事に気付くと思う。そこに早くアジャストすることが大切になると思う」

どんなことが起きても大丈夫。そんなメッセージを発しているようだった。

「まだまだ未熟なので、技術的にも、精神的にも大きくなる姿を日本のファンの方に見せられることが夢。ここに来ることでなく、結果を出すことが目標」

ようやくかなえた「メジャー挑戦」。しかし、それは単なる通過点に過ぎない。

ユウセイ・キクチは新たな覚悟を持って、すでに次の山頂を目指している。

ナガオ勝司

ナガオ勝司

1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員

  • Line

あわせて読みたい

J SPORTS IDを登録すれば、
すべての記事が読み放題

J SPORTS IDの登録(無料)はこちら

ジャンル一覧

J SPORTSで
野球を応援しよう!

野球の放送・配信ページへ