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しかし、マリナーズのジェリー・デポトGMはこの夏もまた、大きな「補強」をしなかった。前半戦終了時点でチーム防御率4.05は、同地区のライバルであるアストロズやアスレチックスより下のア・リーグ8位だったにも関わらず、彼らは何もしないに等しかった。先発左腕のJ.A.ハップ投手(ブルージェイズ)や先発救援のザック・ブリットン投手(オリオールズ)は、ヤンキースが獲得した。
先発左腕のコール・ハメルズ投手(レンジャーズ)は、カブスが獲得した。
救援左腕のブラッド・ハンド(マリナーズ)は、インディアンスが獲得した。
結果的にノンウェイバー・トレード期限の時点で63勝44敗、勝率.589で4ゲーム差の2位だったにも関わらず、マリナーズはいまだにゲーム差を詰めることができずに首位返り咲きができない。それどころか、いつの間にかアスレチックスに2位の座さえも奪われてしまった(「マネーボール続編」が創造するペナントレース台風の目」参照)。
デポトGMは5月にレイズから救援のアレックス・コロメ投手を獲得して賞賛されたが、ノンウェイバー・トレード期限付近では、ヤンキースから救援のアダム・ウォレン投手、ツインズの左腕ザック・デューク投手、そしてマーリンズのキャメロン・メイビン外野手を獲得したに留まった。それで今の順位だから「批判」が出ても良さそうなものだが、やはり、シアトルからそういう「声」は聞こえてこない。「その内、何とかなるさ」と寛容だ。それは東海岸では「敗者の態度」と呼ばれるし、それが地元ファンの「優しい視線」を反映しているのだとしたら、歓迎すべきことではない。
レッドソックス・ファンのように毎試合、殺伐とした雰囲気を本拠地セーフィコ・フィールドに持ち込む必要はないが、いつまで経っても勝てないチームに、そろそろ「声」を上げてもいい頃だ。マリナーズに本当に必要なのは夏場の「緊急補強」ではなく、「勝者の態度」なのだから―。
ナガオ勝司
1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員
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