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野球 コラム 2018年6月18日

大谷翔平に打たれた男と抑えた男

Do ya love Baseball? by ナガオ勝司
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大谷翔平に打たれた男と抑えた男が、サイヤング賞争いをしている。

まだ、開幕してから二カ月しかたってないのは百も承知だ。しかし、そう書きたくなるほど、 大谷と対決した二人の元サイヤング賞投手が、素晴らしいシーズン序盤を過ごしている。

そう、インディアンスのコリー・クルーバーとアストロズのジャスティン・バーランダーだ。

サイヤング賞の投票に、最新の指標≒セイバーメトリクス(野球の統計学)がどれぐらい反映されているかは投票者の胸三寸だが、伝統的な投手三冠タイトルの勝利数、奪三振、防御率のすべてで上位に入っているか否かはいまだに投票を左右する傾向にある。

現地時間6月15日、クルーバーは勝利数で1位、奪三振で7位(106)、防御率で3位(2.24)。バーランダーは勝利数で2位タイ(9勝)、奪三振で4位(120)、防御率で1位(1.61)と拮抗している。

イニング数でもクルーバーが104.2回で1位、バーランダーが100.1回で2位と安定感が突出している。「長いイニングを投げること」。それは自ずと「安打や四球の数が少ない」ことや「失点が少ない」ことにたどり着く。クルーバーとバーランダーは「絶対的なエース」であり、「長いイングを投げること」は分業制が進んだ現在のメジャーリーグではとても際立っている。

クルーバーは今季2戦目、4月4日に敵地アナハイムで行われたエンゼルス戦で大谷と対戦した。第一打席と第三打席は三振に斬って取ったものの、五回二死二塁から外寄りの甘い速球を叩かれて、中越えへの2点本塁打を許した。

その一発で「大谷に打たれた男」になったが、彼がこの試合で許した失点はこの2点だけだった。7回を投げて3安打2失点の好投である(勝ち星は付かず)。

クルーバーは、大谷に打たれる前の3月29日の敵地シアトルでのマリナーズ戦でも8回6安打2失点(今季初黒星)。打たれた後の4月9日の地元クリーブランドでのタイガース戦でも8回2安打無失点(今季初勝利)と3戦連続で好投している。彼はその後もクオリティー・ピッチング6回以上3失点以下を続けて、6月10日の敵地でのタイガース戦でア・リーグ一番乗りとなる10勝目を記録し、投球回はメジャー最多の99回と 2/3に到達した。

クルーバーはこの時点で6試合(168打者、43回1/3)連続の無四球試合を記録。その間、5勝無敗、防御率1.09で46奪三振と圧倒的である。その無四球記録は15日のツインズ戦の四回に途切れ(打者179人、46回1/3)、テリー・フランコーナ監督から「彼も人間なんだってことだね」と風変わりな賞賛(?)を送られたが、奪三振/与四球率は依然としてメジャー最高の9.64を記録。同2位で元巨人のマイルズ・マイコラスの7.00や同3位のマックス・シャーザー(ナショナルズ)の6.61、同4位のバーランダーの6.00を寄せ付けない数字を残している。10勝目を挙げた夜、クルーバーは地元紙にこう語っている。

「誰かを歩かせないためにど真ん中に投げるようなことだけはしないように心掛けている」

クルーバーはサイヤング賞を通算2度(2014年、2017年)も獲得し、メジャー8年で86勝を挙げている32歳の右腕である。彼は今季10勝(2敗)に到達した試合で防御率を1.99まで下げたが、それを上回る成績を残している男がいる。

それがアストロズのジャスティン・バーランダーだ。

バーランダーは2011年にサイヤング賞とア・リーグの最優秀選手賞をダブル受賞したメジャー屈指の好投手で、昨夏、電撃トレードでタイガースからアストロズへ移籍し、ワールドシリーズを含むポストシーズンで活躍して自身初の「世界一」を勝ち取った。

5月16日に敵地アナハイムで行われたエンゼルス戦では、「2番・指名打者」の大谷と対戦。3つの空振り三振を奪うなどして9回5安打無失点の完封勝利を挙げた。その試合後、バーランダーは地元紙にこう話している。 「彼がどれだけ才能のある選手かは、ビデオを見て分かった。初対戦の打者にそういうこと(ビデオで研究)をするのは今まであまりなかったことだった」

バーランダーはその3三振で「大谷を抑えた男」になった。

「多くの選手が彼のプレーを見たいと思っている。僕らは皆、彼のやってることに敬意を払っているんだ。ずっと健康でいて欲しいし、僕がおじいちゃんになって、死の床で『僕は2500奪三振をあいつから取ったんだ』と言いたい」

ずっと健康でいて欲しい―。今となっては叶わぬ望みとなってしまったが、短期間でクルーバーやバーランダーと対決し、打っても抑えられても日米のメディアから注目された大谷だ。その再起を願う選手も、決して少なくはないと思う。

ナガオ勝司

ナガオ勝司

1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員

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