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野球 コラム 2018年5月29日

それでも大谷翔平は、日本人メジャー過去最高級の打者である

Do ya love Baseball? by ナガオ勝司
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たかが二カ月、されど二カ月―。

話を「打者・大谷」に限定する。5月26日のヤンキース戦で4打数無安打に終わり、大谷翔平の打率が3割を切った。打者としての出場30試合目となった翌27日の同カードでも2打数無安打に終わり、打率は今季最低の.291まで落ちた。

メジャー屈指の好投手バーランダー(アストロズ)や、地球最速の左腕チャップマン(ヤンキース)と対戦したことや、打球が極端な守備シフトの正面を突いたことなどは、野球の一部なので不運でも何でもない。それに「打率なんて評価の指標にならない」という意見もあるだろうが、事実として「ヒットを打つ確率が低くなっている」のは確かだ。

出塁率は3割台半ばを維持、長打率は5割台後半から微減傾向にあるとは言え、明らかな成績下降が見られたのは開幕以来、初めてだ。それでも大谷は、過去にメジャーリーグにやってきた日本人打者の中でも突出した開幕ダッシュに成功したと言える。

打者のタイプや出場機会、チームの状態やチームメイトの影響等をまったく度外視して列挙してみると、以下のようになる(新庄剛志や青木宣親は同時期、控えとして出場することが多く、圧倒的に打席数他が少ないのでここには含まない)。

イチローは1年目の2001年、出場30試合時点では137打数48安打で打率.350だった。これは30試合経過時点での歴代日本人メジャー野手の最高打率である。三振は8個しかしておらず、これもこの時点での日本人野手最小記録だ。

松井秀喜は1年目の2013年、出場30試合時点では123打数32安打で打率,260だった。イチローの14打点を大きく上回る23打点は、30試合経過時点での日本人メジャー野手最高である。

松井稼頭央は1年目の2004年、出場30試合時点では122打数28安打で打率.230だった。

井口資仁は1年目の2005年、出場30試合時点では116打数38安打で打率.328だった。その時点での7盗塁はイチローの同時点での6盗塁を上回る日本人メジャー野手最多である。

城島健司は1年目の2006年、出場30試合時点では100打数27安打で打率.270だった。

岩村明憲は1年目の2007年、出場30試合時点では103打数34安打で打率.330だった。

福留孝介は1年目の2008年、出場30試合時点では114打数39安打で打率.342だった。20四球、出塁率.437はこの時点での日本人メジャー歴代最高である。

さて、大谷はどうか。

大谷が突出しているのは6本塁打と長打率.564だ。

出場30試合時点での本塁打数は、城島の3本塁打が過去最多だった。イチロー、松井秀、松井稼、井口はこの時点で2本塁打。岩村と福留は1本塁打である。

出場30試合時点での長打率は、福留の.491が過去最高だった。続いてイチローの.474、岩村の.447、井口の.431、城島の.410、松井秀の.366、松井稼の.336と続く。

つまり、大谷の出場30試合時点での本塁打数と長打率は、彼が過去のどの日本人打者も寄せ付けないほどの「長打力」を持っているという証だ。

そして、彼はほかの部門でも「いい勝負」をしている。

大谷の出場30試合時点での.291は、イチローの.350、福留の.342、岩村の.330、井口の.328に次ぐ歴代5位である。同時点での30安打はイチローの48安打、福留の39安打、井口の38安打、岩村の34安打、松井秀の32安打に次ぐ数字だ。

シーズンが終わった時点でそれがタイトルに結びついたのは、イチローの242安打と打率.350、そして56盗塁だけだが、「投打二刀流」を貫く限り、タイトルの有無は問題ではない。メジャー1年目の日本人打者たちが、総じてシーズン序盤は好結果を残していることを考えれば、すでに本塁打数や長打率で他を圧倒し、打率や安打数でも「いい勝負」をしている大谷は、「打者単体」で考えても、日本人メジャーリーガー過去最高と言えるスタートを切っている。

ナガオ勝司

ナガオ勝司

1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員

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