イチローの戦力外回避は当然なのか？

マリナーズを100パーセント信じていたか？と言えば、少し嘘になる。

現地4月16日、マリナーズの地元紙「タコマ・トリビューン」が正左翼手のギャメルが故障者リストから復帰した場合、外野手が5人になるため、打率．212のイチローが戦力外になる可能性を示唆した。

イチローが戦力外になる代わりに、左腕ミランダが降格した。

同4月22日、エラスモ・ラミレス投手が復帰すれば、今度こそイチローが戦力外になる危機だ、と地元紙の多くが見解を述べた。

イチローが戦力外になる代わりに、ヘレディア外野手がマイナーに降格した。

マリナーズはギャメルが開幕後に復帰することを前提にイチローを獲得したのだから、「イチローが戦力外」になることなんて有り得ない、と思っていた。そんな気持ちがいざ「その時」が近づくと、ほんの少しグラついた。

そうなった理由の一つは、例えば「彼らが復帰した時、誰を25人枠から外すのか？」と地元メディアから問われたサービス監督が「まだどうなるか分からない」と会見で話していたことに起因していた。そのコメントを「イチローが戦力外になる可能性もある」と捉え、「ミランダやヘレディアをマイナーに降格させれば、済む話なのです」と楽観的に思えなくなってしまったのだ。

だが、そもそも選手の異動について責任を持たない監督に「誰を25人枠から外すのか？」なんて尋ねても分かるはずがない。選手の異動を決めるのは編成のトップに就いている人物であり、マリナーズの場合、それはデポトGMである。

同GMはイチローが残留すると、地元紙に「イチローはこの1カ月半、クラブハウスで若手だけでなく、ベテランにも影響を与えている」と話したそうだが、打率3割以上を打っていたヘレディアの降格理由ではなく、イチローの残留理由を話したところに腐心した様子が伺える。

メジャーリーグでは実績あるベテランより成績の良い若手選手がマイナーへ落とされることはよくあることであり、ヘレディアは今までメジャー各球団が何度となく繰り返してきたマイナー降格劇に組み込まれたに過ぎない。

メジャー歴2年に満たないヘレディアのような若手選手は、イチローのようなベテランと違って、マイナーに降格する際にウェイバー公示して他球団に奪われるリスクがない。ヘレディアが年俸調停権やフリーエージェント権を取得するタイミングは遅ければ遅い方が球団にとっては好都合だ。地元紙はヘレディアのマイナー降格に批判的な意見を述べていたが、よく考えてみると「スター外野手」の評価を受けているわけでもない「控え外野手」に、何の手も打たずにメジャー歴を稼がせるビジネス上の理由が見当たらない。

今もマイナーにはフィリーズやナショナルズで活躍したメジャー通算229本塁打のベテラン、38歳のワース外野手がいたりして、同選手がマイナーで驚くような大活躍をすれば、また「イチロー戦力外」が話題になるだろう。その時にはワースの「一発長打」や「右の代打としての利便性」が「ヘレディア待望論」を上回り、イチローの打撃や守備や走塁といったものより評価され、地元紙が騒ぎ出すかも知れない。

しかし、今はとりあえず、ハニガー右翼手、ゴードン中堅手、ギャメル左翼手という布陣が「鉄板」になってる以上、「控え外野手」が誰になろうが戦力的にはあまり変わりはない。そこに「マリナーズOBとして未来の殿堂入りが確実」のイチローが入るのは至極、当然なのではないかと思う。

代わりにマイナーへ降格したのは、打率・310のヘレディア外野手だった。イチローの打率は試合前の時点で・212。首脳陣は、23日（同24日）からの相手先発は7試合連続で右腕となる見込みであることを考慮したという。またMLB公式サイトは、ディポトGMの「25人を決めていく作業は難しい。イチローはこの1カ月半、クラブハウスで若手だけでなく、ベテランにも影響を与えている」とのコメントを掲載した。