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エンゼルスが現地4月12日時点でア・リーグ西地区の首位に立っていること自体に、そう驚きはない。だが、その中心に日本人選手がいるということは、去年の今頃は想像もできなかった。
去年の今頃―。
暦の上でなら、去年の4月12日もエンゼルスは6勝3敗、勝率.667で2位アストロズに0.5ゲーム差をつけて首位に立っていた。今年は11勝3敗、勝率.786で、やはり2位アストロズに1.5ゲーム差をつけて首位に立っている。
ところが今と同じ14試合経過時点では、去年のエンゼルスは7勝8敗と負け越して2位に後退し、9勝5敗と同じペースで勝ち続けたアストロズに首位の座を明け渡した。
去年のエンゼルスは開幕ダッシュにこそ成功したものの、9試合目から6連敗、勝ちを一つ挟んで11試合目から3連敗と苦戦した。それでも4月は4連勝や5連勝したお陰で14勝13敗と勝ち越している。去年の4月終了時点では首位アストロズが16勝9敗、勝率.640、2位エンゼルスが14勝13敗、勝率.519で両者はわずか3ゲーム差だった。
去年の四月終了時点でのエンゼルスは、チームの打撃成績が軒並みア・リーグ10位前後に沈んでおり、とりわけ長打率に関してはリーグ13位の.359と低迷していた。
試合数が違うので単純な比較はできないが、現在エンゼルスのチーム打撃は14試合終了時点で93得点、22本塁打、打率.290、出塁率.347、長打率.481と軒並みリーグ・トップだ。とりわけ長打率は2位ブルージェイズの.449を大きく上回っている。
何が違うのか? それを説明するのはとても簡単だ。そう、大谷が入ることの多い「指名打者」と「8番打者」の打撃成績だ。
エンゼルスは現在までのところ、指名打者に大谷が6試合、元々のポジションである一塁手を兼任するプホルスが6試合、アップトンとヤングがそれぞれ1試合ずつ指名打者に入っている。ここまでの14試合、指名打者の打撃成績は6得点、3本塁打、15打点、打率.250、出塁率.286、長打率.467である。すべて「指名打者」での出場である大谷の個人成績が現在までのところ4得点、3本塁打、11打点、打率.346、出塁率.414、長打率.769(!)だから、足し算で計算できる成績の大部分を大谷が締め、割り算で計算する成績は「大谷がいなければ、もっと率が低くなっていただろう」という結論になる。
プホルスが指名打者になる時はその打順が「4番」、アップトンの時は「3番」、大谷とヤングの時は「8番」となっているが、その「8番」の成績も去年とは極端に違う。
去年は打順「8番」の年間の成績が打率.205、出塁率.267、長打率.335だったが、今年は今のところ打率.358、出塁率.433、長打率.623と劇的に上がっている。もちろん、大谷一人が「8番」を打ってるわけではなく、マーテイ内野手が4試合、マルドナド捕手が3試合、ヤングが1試合とシェアしているわけだが、もっとも多い6試合に出場の大谷の寄与するところは多い。
エンゼルスのソーシア監督は、大谷を13日の試合で「7番」に入れたが、今後も打順の繰り上げは有り得る話だ。いずれにせよ、「大谷の8番・指名打者はエンゼルスの開幕ダッシュに大きく寄与している」のである。
ナガオ勝司
1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員
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