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野球 コラム 2018年3月26日

日本の匠(たくみ)、牧田和久の大いなる挑戦

Do ya love Baseball? by ナガオ勝司
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埼玉西武ライオンズからサンディエゴ・パドレスに移籍した牧田和久が、チームメイトや相手チームの打者を驚かせている理由は、彼がアンダースローだからではない。

正確にはアンダースローという投球フォームではなく、アンダースローから繰り出す特異な球筋である。

「低い位置からまるで浮き上がってくるようなファストボールなんだ。今まで対戦したどんな投手とも違っていた」

そう言ったのは、弱小球団パドレスが近い未来のために大枚をはたいて獲得した元カンザスシティー・ロイヤルズの主砲エリック・ホズマー一塁手だった。

日本のプロ野球ファンにはお馴染みの、あの高めに伸びてくる速球は時速130キロ前後であり、メジャーリーグなら変化球ぐらいの速さなのだが、見た目は時速145キロ以上あるように見える。

「スピンを効かせて投げられれば、下からでもああいう球筋が可能になるんです」

と牧田は言う。オーバースロー=上手投げなら縫い目に2本の指をしっかりかけてバックスピンをかければ伸びのある球、切れのある4シーム・ファストボールになる。アンダースローの場合、普通に投げれば斜め下からのスピンがかかってしまうので、多くのアンダースローの速球は一度浮き上がってから、そのスピンなりに打者の手元で沈む。そういう投手が米国にも何人かいて、それはそれで打ち難いらしいのだが、牧田は指で切るようにボールを弾き、打者の手元でもまだスピンが効くように投げている。結果、ホズマーが言うように「今まで対戦したどんな投手とも違っていた」という球になる。

ある意味、牧田はアンダースローという特殊技能を極めた人なのかも知れない。

「極めては……いないですけどね」と牧田は笑う。彼は話すべき多くの言葉を持っている。そして、その言葉を一つ、一つ、繋げる時、彼は学者然とした語り口で聞いている者の好奇心をかき立てる。

「自分にしかないものってあると思うんですが、自分の場合、それがアンダースローだった」

パドレスは、その牧田をオープン戦で隠した。ナ・リーグ西地区のダイヤモンドバックスやロッキーズ、ジャイアンツやドジャースといった同地区のライバルはもちろんのこと、対戦相手をア・リーグ、もしくはマイナーリーガーに限定した。違う言い方をすれば、それぐらい牧田のピッチングは特異なものであり、パドレスの首脳陣は相手に対策を立てさせる余地を与えたくなかったのだろう。

それを知ってか、オープン戦が始まった頃、牧田は「打たれてみないことには分からないこともありますから、三者凡退とかで抑えるよりは打たれた方がいい」と言っていたのに、その温存ぶりが徹底されていることを悟ると「まあ、もういいかなと思ってたりもするんです」と諦念していたようなところがあった。

「いつも言ってることですけど、バットが下から出てくる打者が多いので、やはり高めは接点がない。あとは変化球をうまく使えればいいんですけど、カーブをしっかり待たれてヒットにされているし、使い方とか投げるコースとか、あるいはもう少し速いカーブを投げるとか、いろいろ考えていかないといけないと思いますね」

だから、答えはまだ出ていない。牧田がメジャーリーグでどんな成績を残し、どんな役割を担うことになるのかは、実際にシーズンが開幕して、牧田がマウンドに上がって各球団の「現役バリバリ」のメジャーリーガーと対戦してみないことには導き出せない。

「いろいろやりたいこともあるし、まだまだ試してないこともあるし。アメリカに来て、違う軌道で投げるアンダースローの投手が自分の持ってないものを持ってる。自分に身につけられるものなら、身につけたい」。

日本で極めたアンダースローという技巧。それはどれぐらいメジャーリーグで通用するのか。どんな風にメジャーリーグで通用するのか。考えただけでもワクワクする。日本の匠(たくみ)、牧田和久。彼はそれを、メジャーリーグという大舞台でさらに磨こうとしているのかも知れない―。

(文中敬称略)

ナガオ勝司

ナガオ勝司

1965年京都生まれ。東京、長野、アメリカ合衆国アイオワ州、ロードアイランド州を経て、2005年よりイリノイ州に在住。訳書に米球界ステロイド暴露本「禁断の肉体改造」(ホゼ・カンセコ著 ベースボールマガジン社刊)がある。「BBWAA(全米野球記者協会)」会員

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